え、まだ「自社らしさ」とか求めてるの?経営の神様・稲盛和夫が「朝令暮改」をすすめるワケPhoto:JIJI

意見や考えがコロコロ変わる様を指す「朝令暮改」という言葉はネガティブに使われることがほとんどだ。しかし、経営の神様・稲盛和夫氏は「朝令暮改」を前向きに捉えていた。「これが我が社の型だから…」とこだわってしまう人たちに、ぜひ「稲盛流 朝令暮改」を知ってもらいたい。(イトモス研究所所長 小倉健一)

「我が社のウェイ」にこだわっていると、生き残れない

 ある出版社に頼まれて、雑誌の特集やタイトルの歴史を掘り下げる本をつくっていて、レジェンドたちの雑誌づくりを調べる作業をずっとしている。

 雑誌の歴史というと戦前の「キング」(現在の講談社が1924年に創刊し、1957年に廃刊)が有名だが、中身は空想ファンタジーなので、私の中では「キング」は文芸誌だ。

 実話をベースにした題材を扱ったという意味では、「平凡パンチ」「プレイボーイ」「週刊現代」「週刊文春」といった黄金時代をつくった100万部雑誌たち――。こうしたミリオン雑誌の編集長ほど、企画作りは狂気をはらみ、簡単に言えば、はちゃめちゃなものばかりだ。

 雑誌の歴史をひも解くと、現在のメディアによくある、型にハマった「我が社のウェイ(道)」、つまりメディアそれぞれの理念やら価値観なるものがいかにいい加減なものかがわかる。

 みんな売ることに必死で、売れた後に、そういえばこういう道をたどってきたものが「ウェイ」なのであり、大体にしてそれは結果論の産物であった。

 メディアが自ら作ったウェイの上を歩いているというのは、それこそファンタジーだ。、本来は読者のニーズという「生き物」に常に適応していかないといけない。特に、歴史の浅いオンラインメディアでは「朝令暮改」こそが生き残りの術だろう。

 京セラやKDDIを創業し、日本航空を再建。経営の神様と呼ばれた稲盛和夫氏も「朝令暮改」は多かった。