身近な統計数字を使ってデータ分析のプロセスや読み誤りのコツを学ぶ吉本佳生さんの新刊『データ分析ってこうやるんだ!実況講義』の一部をご紹介する本連載の第2回は、「若者の免許離れ」がテーマです。カーシェアリングなどが広がる一方、特に若者の“クルマ離れ”が叫ばれて久しいですが、本当にそうなのでしょうか?ミクロとマクロの両面からデータを分析し、その実態を明らかにしていきます!

「若者の免許離れ」が起きている?

 関西大学会計専門職大学院での講義のなかで、最近のクルマのCMについて、学生に感想を求めました。すると、トヨタ自動車のドラえもんシリーズのCMが印象的だ、と答えた学生がいました。

 トヨタが有名タレントをドラえもんの登場人物に見立ててシリーズ化しているCMでは、のび太くんが運転免許を取ろうとして悪戦苦闘するのですが、明らかに「若者にクルマの運転免許取得を促す意図」が読み取れます。学生は、それが印象的だとの感想を述べたのでした。

 さて、多額の宣伝費用をかけて豪華なキャストを登用したテレビCMを大量に流してまで、若者に免許取得を促すことが、本当に必要なのでしょうか。自動車教習についてのミクロデータ(個別のモノやサービスについてのデータ)と、日本経済全体についてのマクロデータを組み合わせて、分析してみます。

 まず、警察庁のサイトで運転免許についての統計を調べます。若者の免許取得について分析したいのですが、まずは全年齢層のデータをみて、全体像を把握しながら若者に焦点を当てるプロセスが大切です。

 年齢別の運転免許保有者数をグラフにしたのが図表1です。2012年末のデータを右に、2002年末のデータを左に置いて、10年間での変化がわかるようにしてあります。年齢階級が5歳ずつの区切りになっていますから、同じ人が属する年齢階級は、左のグラフから右のグラフに移る際に、2つ上がります。

 運転免許保有者が多いのは、まず、2002年では50〜54歳、12年では60〜64歳で、両者は同じ人たちです。「第1次ベビーブーム」世代です。また、02年では25〜29歳と30〜34歳、12年では35〜39歳と40〜44歳の人数も突出していて、この両者も同じ人たちです。「第2次ベビーブーム」世代に当たります。

 こうした解説は、日本の人口データと対比しているからできることで、個別のモノやサービスについて分析する場合であっても、ミクロデータだけをみるのではなく、必要に応じて背景にあるマクロデータも確認するべきだとわかります。