欧州中央銀行(ECB)は、追加の金融緩和策の中で、民間銀行のECBへの預金について利息を支払うのではなく0.1%の手数料をもらうこととした。いわゆるマイナス金利である。

ポイントは実質金利を下げること

 今回の措置について、知人の金融関係者から、次のメールが来た。

――量的緩和の方の効果が大きいのは、波及経路が、中銀がマネタリーベースを増やす→インフレ予想に働きかける→予想インフレ率の上昇→実質金利の低下→実体経済の刺激 であるのに対して、マイナス金利は、中銀当座預金にマイナス金利→当座預金の減少→民間銀行のポートフォリオリバランス・貸出増加→実体経済の刺激だが、実際は民間銀行が預金まま保有するか、短期金融市場での運用にとどまっているかもしれず、実体経済への刺激効果が小さいからでしょうか――

 この人は、かつての日銀が、メール後段にある「貸出に回らない論」から量的緩和に効果なしといっていた時代から、筆者がいうメール前段の「マネタリーベースによる実質金利下げ論」を理解してくれた人だ。しかし、いまだにかつての日銀の呪縛から逃れていないようだ。

 経済が苦境の時に、金融・財政政策を発動するのは、両政策ともに有効需要を創出できるからだ。財政政策は、政府部門が公共事業などによって直接有効需要を作るのでわかりやすい。一方、金融政策は民間部門で消費や投資等の有効需要を作るためには、「実質金利」(=名目金利-予想インフレ率)を下げることがポイントである。

 なお、変動相場制では、財政政策単独ではあまり効果が出ないことが知られている(マンデル=フレミング効果)。その点、金融政策にはそういった弱点はない。もっとも、十分に金融緩和していれば、財政政策もその効果を発揮できる。