100名以上の学者が一瞬で
「都構想」にダメ出し
いわゆる「大阪都構想」、すなわち「大阪市の廃止五分割」(以下、『都構想』と略称)をめぐる住民投票日、5月17日が目前に迫ってきた。今、大阪では激しい論戦が繰り広げられており、世論調査によればその賛否はおおむね拮抗している状況だ。本ダイヤモンド・オンラインでも(大阪市特別顧問でもある)高橋洋一氏が「『大阪都構想』を逃せば大阪の衰退はさらに進む」という自説を公表しているが、この主張はもちろん、橋下市長率いる「維新」の勢力のそれと同様だ。
しかし、この高橋氏の見解は学術界では極めて「特異」なものであり「圧倒的少数派」である。学術界では「大阪市を廃止して、5分割して、東京都のような都区制度を導入すれば、大阪は衰退していくだろう」という見解が圧倒的多数なのだ。
例えば賛成派の学者は先月、大阪市内で、都構想のメリットを主張する記者会見を開いているが、参加した学者はたった2名。しかも両名とも大阪市の特別顧問経験者(上山信一・慶応大学教授、および、佐々木信夫・中央大学教授)で、それ以外の(大阪市との特別顧問関係を持たない)一般の学者は含まれていなかった。
一方で筆者は4月末日、「大阪都構想の危険性を明らかにする学者記者会見~インフォームド・コンセントに基づく理性的な住民判断の支援に向けて~」を5月5日に開催するとして、さまざまな分野の学者に「都構想」についての所見を供出するよう、インターネット等を通して呼びかけた。
京都大学大学院工学研究科教授、同大学レジリエンス研究ユニット長。1968年生。京都大学卒業後、同大学助教授等を経て現職。専門は公共政策論、都市・国土計画。『大阪都構想が日本を破壊する』、『凡庸という悪魔~21世紀の全体主義』など著書多数。
するとわずか1週間で、行政学、政治学、財政学、都市計画、社会学、社会哲学といった様々な分野から、100名を超える賛同者からの所見供出の申し出があった。その大半は、筆者と直接に面識のない学者達ばかりだ。そして現在、実に106名から「都構想の危険性についての所見」が寄稿された(その詳細は是非、こちらをご覧いただきたい)。
当初筆者は7、8人集まれば御の字、あわよくば10名以上集まればありがたいと考えていたのだが、これほど多数の学者が一瞬にして「都構想の危険性」についての各自の独自の所見を寄稿したのには、正直驚いた。
これだけの学者が、「自らが知る都構想の危険性を有権者・公衆に伝えねばならぬ」という「学者の良心」に基づいて所見寄稿をしたという事実はまさに、あらゆる分野の学者が、「都構想」について強い危機感を抱いていたことの証左としか言いようがない。