『原子炉時限爆弾』で、福島第一原発事故を半年前に予言した、ノンフィクション作家の広瀬隆氏。
このたび、壮大な史実とデータで暴かれる戦後70年の不都合な真実を描いた『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』が大反響となり、第3刷が決まった。
新著で「タイムリミットはあと1年しかない」と、身の毛もよだつ予言をした著者が、おそるべき危険性を緊急警告する!

人間には、“超えてはならない一線”がある

広瀬 隆(Takashi Hirose)
1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図的で衝撃な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書の翻訳者を経てノンフィクション作家に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツの暗号文』『億万長者はハリウッドを殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの経済支配者たち』『アメリカの巨大軍需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『資本主義崩壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数。

 原発とは、原子力発電の略語である。
 つまり日本では、「発電する」ことに、原発本来の目的がある。

 ところが、アメリカ・ヨーロッパ・ロシア・中国の核兵器保有国では、それ以外に、原子炉を使って、ウランから原子爆弾や水素爆弾の原料であるプルトニウムをつくりだす、というおそるべき軍事的な目的がある。今でも、それが続いている。

 そもそも歴史的には、アメリカが第二次世界大戦中に原爆の開発に成功したあと、核分裂のエネルギーを爆弾以外のところに実用化しようという発想から、戦後の1954年にアメリカ海軍の原子力潜水艦第一号が、ディズニー映画『海底二万哩《マイル》』の潜水艦に因んでノーチラス号と名づけられ、進水した。

 この原子力潜水艦の動力として使われた小型の原子炉が、のちに陸にあがって巨大な原子力発電所となっていった。それが、電気を利用する原発の生みの親となったわけである。

 その原水爆の利権が、途方もない規模の巨大な軍需産業──人殺し産業を全世界に生み出してしまったのだ。
 その利権を求める欲望が、とどまるところを知らずに膨張してゆき、われわれの背後では、それが今でも、全世界の原発を動かす巨大な動力となっている。その経過を書いたのが、『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』である。

 だが、安倍晋三や麻生太郎のように、核兵器を保有したいという願望に取り憑かれた危険思想の人間たちに言っておきたいことがある。

 8月6日と8月9日に、広島・長崎に原爆が投下されてから70年目の記念日がやってくる。原水爆を枕元に置いて寝たいという人間は、その悲劇の記念式典で語られる言葉に、心から耳を傾け、広島と長崎で起こった歴史上の出来事を、再びしっかり目を開いて見る必要がある。

 その原爆の熱線に焼かれる惨劇を体験した語り部の方たちは、現在生き残っている人も高齢に達し、今では語り口も、きわめておだやかである。
 だが、内心の怒りと哀しみは、他人には到底分らないほど強く、また深いものである。戦後に育った私たちには、この人たちの心中を思い測るだけの人間としての想像力が求められる。人間には、“超えてはならない一線”というものがあることを。