『原子炉時限爆弾』で、福島第一原発事故を半年前に予言した、ノンフィクション作家の広瀬隆氏。
壮大な史実とデータで暴かれる戦後70年の不都合な真実を描いた『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』が増刷を重ね、第6刷となった。
本連載シリーズ記事も累計253万ページビュー(サイトの閲覧数)を突破し、大きな話題となっている。
このたび、新著で「タイムリミットはあと1年しかない」とおそるべき予言をした著者と、女優の木内みどり氏が初対談!
木内みどり氏は、原発問題に関して、各種市民集会の司会を務めている。
8月11日の川内原発再稼働後、豪雨による鬼怒川決壊、東京で震度5弱、阿蘇山噴火、南米チリ沖マグニチュード8.3地震による津波余波など、日本列島を襲う自然災害が続出している。
本誌でもこれまで、計29回に分けて安倍晋三政権および各電力会社社長の固有名詞をあげて徹底追及してきた。
川内原発、伊方原発再稼働の動きの中で、東京を含む東日本地域への「実害」が迫っているという、注目の対談2回目をお届けする。
(構成:橋本淳司)

「もう一回原点に戻りたい」
と思って書いた本

広瀬 隆
(Takashi Hirose)
1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図的で衝撃な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書の翻訳者を経てノンフィクション作家に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツの暗号文』『億万長者はハリウッドを殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの経済支配者たち』『アメリカの巨大軍需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『資本主義崩壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数。

木内『東京が壊滅する日』を手にとったとき、最初は戸惑ったんです。
 ここに書かれている現実を、受け入れなくてならないだろう、と思ったからです。
 読みはじめてみると、やっぱりスゴイ事実がいっぱいあって。事実に目を背けてはいけないなと思いました。それで広瀬さんにお礼を言わなきゃと思いました。

広瀬 なぜですか?

木内 この本に出てくることは、広瀬さんの長く激しい人生の努力の結晶。それを抽象論ではなく具体的な固有名詞で断罪! 惜しげもなく闇の世界のことを全部出してくださって。覚悟の度合いが違うと思いました。

広瀬 僕は、どうすれば本当に原発を止められるか、いつも考えてきたつもりです。
 ところが、世論調査では100%勝っているのに原発が再稼働してしまう。

 そこで僕は、政治運動でなく、デモのような大衆行動で、一人ずつが社会を変えなければダメだと思っています。青森ではそういう体験があります。

 僕は再処理工場の核燃サイクル反対のために1985年から青森に入り、あらゆる農協を回りました。
 真冬が農閑期なので、寒い日々の中でしたが、10人くらいの集まりでも、100人の集会でも、絶えず放射能の危険性について、くわしく話しました。
 すると、やがて保守ゴリゴリの青森県が変わり始め、1988年の選挙のときは再処理工場反対の人が大勝したのです。
 つまり、選挙というのは、日々の活動があって、その結果が出るのです。

木内 それはすごいですね。

木内みどり
(Midori Kiuchi)
女優。1965年劇団四季に入団。初主演ドラマ「日本の幸福」(1967/日本テレビ)、「安ベエの海」(1969/TBS)、「いちばん星」(1977/NHK)、「看護婦日記」(1983/TBS)など多数出演。映画は、三島由紀夫原作『潮騒』(1971/森谷司郎監督)、『死の棘』(1990/小栗 康平監督)、『大病人』(1993/伊丹十三監督)、『陽だまりの彼女』(2014/三木孝浩監督)、『0.5ミリ』(2014/安藤桃子監督)など話題作に出演。コミカルなキャラクターから重厚感あふれる役柄まで幅広く演じている。3・11以降、脱原発集会の司会などを引き受け積極的に活動中。Web Magazine:「木内みどりの発熱中!」

広瀬 でも次の選挙では、みんなが放射能のことは言わず、「誰々に投票してください」という、例の選挙運動になりました。
 僕は「これは危ない」と感じました。具体的な内容を言わずに「この人に投票してください」と言っても、人の心は動かせません。
 現在でも、中身のあることをどんどん言っていけば、人は変わるはずです。絶えず、言い続ける必要があります。

 先月、木内さんが本ステージで司会をした代々木公園の大集会でも、第二ステージでたくさんの人が、被曝問題を語ってくれていたので、うれしかったです。あの中身が大事なのです。

 同じように、もう一回原点に戻りたいと思って書いたのがこの本です。
 担当編集者から、嫌になるくらいしつこく質問されました。
 これは忍耐だと思って、忍耐に忍耐を重ねて丁寧に加筆していきました。この編集者を変えないと、世の中を変えるなんて夢のまた夢ですからね。

 結果として、それがよかった。僕にとっては当たり前のことになっていたことも、改めてわかりやすく書くことができました。苦労はしましたけど……。