“自滅”に向かう資本主義経済

 ロボットやAI(人工知能)技術が、飛躍的に発達している。そのおかげで人間の仕事が奪われ、失業する人が増えるのではないか、という指摘がここ数年よく聞かれるようになった。

生産性を追求し続けると、仕事が無くなるという「矛盾」『限界費用ゼロ社会』
ジェレミー・リフキン著/柴田裕之訳
NHK出版
531p 2400円(税別)

 とは言っても、まだまだ先の話だし、自分には関係ないと思っている人も多いだろう。しかし、日本でもキヤノンが国内の二つの工場を2018年をめどに完全自動化・無人化すると発表している。決して他人事ではないのだ。

 現在、大手自動車メーカーやGoogleなどがこぞって開発に取り組んでおり、実用化も間近と言われている「自動運転車」についても、同じことが言える。米国ではダイムラー社が開発した自動運転トラックが2015年、世界で初めて公道を走行することが認可された。近い将来、自動運転車が普及すれば、トラックやタクシーの運転手が職を奪われることになるかもしれない。

 メルケル独首相をはじめ各国首脳や政府高官のアドバイザーを務める文明評論家のジェレミー・リフキン氏は、1995年の著書『大失業時代』で「文明は労働者をほぼ必要としない世界にいっそう近づく」と予言している。広い視野と鋭い洞察力による未来構想に定評のある同氏の最新作が本書『限界費用ゼロ社会』だ。

 本書で同氏は、資本主義経済は本質的に矛盾を抱えており、そのせいで衰退に向かっていることを指摘。その最終段階で現れるのが「限界費用ゼロ社会」だと分析する。

「限界費用」という言葉に耳慣れない人もいるだろうが、これは「モノやサービスを一つ(1ユニット)追加するのにかかるコスト」を意味する。これがゼロに近づくほど生産性が上がり、効率的に利益を生むことができる。