マンション住人の「修繕積立金負担」が吊り上げられる裏事情マンション住人の中には、修繕積立金の負担が高いと感じたことはないだろうか。必要以上に行なわれるマンションの大規模修繕や管理組合が負担する高額なコストの背景には、不動産業界の悪しき慣習が横たわっている(写真と本文は関係ありません)

前回に引き続き、「管理費」「修繕積立金」などのマンションにかかるコストを合理化するための方策を考えて行こう。今回は、「修繕積立金不足」に焦点を当てる。

 修繕積立金の適正化は管理費よりも難易度が高い。修繕工事の必要性、相場、業者談合の手口、発注方法など、専門的な知識と業務経験が不可欠となる。ここでも、難しいことを自分でやる必要はない。最終的に管理組合は、委託するパートナーを選ぶのが主たる仕事となる。その前提として、日本で一番わかりやすくこの問題の本質を理解できるように書こうと思う。

意外と知らない高負担
大規模修繕工事の相場

 マンションでは、大規模修繕工事が長期修繕計画書に概算価格で想定されている。1回目の設備工事を伴わない大規模修繕工事で、1戸当たり100~150万円で計画されているケースが多い。その相場価格は、おおむね床面積1平方メートルあたり1.2万円が目安だ。

 つまり、マンションの平均専有面積が70平方メートルだとすると、70平方メートル×1.2万円=84万円/戸となる。実際に工事をする際には、しっかりと要件定義をして、競争原理を徹底し、厳しく見積もりを取っていくと、コストが2割、3割と下がる計算になる。

 総額は戸当たり単価に戸数をかけ合わせて、100世帯であれば84万円×100戸=8400万円となる。何事にも相場はあるので、ベンチマークにして精査することが必要になるが、これが意外に簡単ではない。業者に談合されたら、相場はうまいことつり上げられてしまうからである。

 分譲マンションの大規模修繕工事計画の平均周期は12年だ。これは国交省のガイドラインの設定であるが、賃貸マンションでは20年が大規模修繕工事の周期となっている統計が公表されている。分譲はやたらと工事をやりたがる傾向があり、賃貸は自分が住まないオーナーが先送りする傾向があるため、実際に適正な期間はと言うと、15~16年くらいを目安にしておくとよい。

 そもそも12年の計画を15年にしたりすると、「大規模修繕工事をやらなければ、建物の資産価値が落ちる」と言われることがあるが、鵜呑みにしないことが大切だ。大規模修繕工事をやったからといって、マンションの売買価格が上がるわけではない。そんな事例があるのなら、出してもらうといいだろう。