ゴールデンウイーク真只中の5月4日夜、都内で初めて公開で行われた「ひきこもり大学in東京キャンパス」には、90人の参加者が全国から集まった。

 講師やスタッフを含めると、100人を超える大型イベントとなり、その半数以上は「当事者」(本人申告)が占めた。

 また、そのうちの半数は、当日参加という、いつもながらの人数の読めない主催者泣かせの会となった。

引きこもり当事者が先生に
学部学科も様々な「ひきこもり大学」

 ひきこもり大学というのは元々、当事者から生まれたアイデアの1つ。2ヵ月に1度開かれている『ひきこもりフューチャーセッション「庵-IORI-」』のアイデア会議の打ち合わせで、とらさんという30歳代男性の発案したアイデアが、周囲のサポートを受けて具現化したものだ。

 発案者のとらさんによれば、ひきこもり大学とは基本的に、当事者が先生になり、家族や支援者、一般の人たちが生徒になって、引きこもり経験や知恵を学ぶ場。生徒が勉強になると思ったら、先生にそのまま渡す寄付金箱に投げ銭を入れてもらう。

 引きこもっている人たちは外に出たいと思っても、一般の人が想像する以上に公共交通費が高く、家から出てくるだけでも金銭的な負担が大きい。そこで、せめて「交通費くらいの費用は参加者に負担してもらえるといいな…」という当事者ならではの思いが、発想の根源にある。

 また、「引きこもり」といっても、広く状態像を示すもので、それぞれの当事者が抱える生きづらさの状況は様々だ。そこで、先生を務める人が、自由に話したい趣旨に基づいて学科名をネーミングできるのも大きな特徴だろう。

 これまで東京では、講師を務めたい当事者が名乗りを上げたら、非公開で小さく安心できる場の中で散発的に開いてきた。

 ただ、地方でもひきこもり大学を開いてほしいという声が多いことから、今回は、地域に数多く埋もれる当事者や家族に、こうした試みの存在を知ってもらおうと、実験的にデモンストレーションとして行うことになった。

 運営は、希望者を募って「ひきこもり大学事務局」をつくったものの、彼らの多くは当事者や社会人らのボランティアスタッフだ。この日は、庵セッションでお手伝いしてくれている学生団体One'sLifeの有志も協力してくれた。