「派遣切りが話題になっているが、財務的に見れば、年収100~300万円の非正社員をいくら雇用調整しても、大きなインパクトはない。実は企業が本当に切りたいのは、正社員だ」
ある証券アナリストはこう明かし、派遣切りが正社員のリストラの“前哨戦”に過ぎないことを示唆した。
それを裏付けるかのように、電機、食品、商社、金融業界などの経営者や人事担当者らは、こう口を揃える。
「不況で仕事が減り、確かに従業員に余剰感がある。ただ、それよりも以前から頭を悩ませていたのは、40代の余剰人員だ。特にバブル期に大量採用した社員の中には、仕事ができない社員、仕事をしない社員、うつ病で休職を繰り返して仕事ができなくなった社員などがたくさんいる」(あるメーカーの人事担当者)
正社員も非正規社員も
危機感は同レベルに!
経済環境が日に日に悪化するなか、こういった社員をリストラしたいのが彼らのホンネである。だが正社員には解雇規制があるため、どうしようもない。その結果、「人員削減のしわ寄せが非正規社員に向かっている」(同)というわけだ。
今や製造現場の派遣切りだけでなく、事務系の派遣社員が契約打ち切りになるケースも出始めた。そればかりか、ソニーや日本IBMなどでは、正社員も含めた大規模なリストラが実施されている。もはや正社員にとっても“失業”が他人事ではなくなって来ているのだ。
このような現状に強い危機感を募らせるのは、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主任研究員である。
「過去のオイルショック時よりも景気が急速な落ち込みを見せており、2009年1~3月期のGDPは、マイナス幅がさらに拡大する可能性もある。これはもう、戦争や大災害などの“天変地異”が起きたのと同じレベル。雇用環境も急速に悪化し、それが年度変わりと重なったため、通常なら段階的に行われる雇用調整が、非正規社員、正社員、新卒者に到るまで全て同時に起きている状態だ」(小林研究員)
こんな状況では、社員はたとえクビがつながったとしても、激務となったり、賃金の低下など、労働環境や労働条件の悪化は避けられないだろう。非正社員はおろか、正社員の足許も同様に不安定になっているのが現状なのである。