アルビン・トフラー 変化の研究の世界的第一人者として広く認められているアルビン・トフラーは、決してありきたりの予言者の類ではない。

 彼は「トレンド」や「予測」といった言葉を著作の中で使用しないよう注意を払い、未来に何が起こるか正確に言い当てられる人などいないと言っている。

 彼が特に優れているのは、変化がもたらす影響を理解する力である。

 この理解力は、科学やテクノロジーや芸術に関する広く深い知識の賜物であるとともに、複雑な技術的・社会的変化がわれわれの固定観念や既得権に影響を及ぼしたとき何が起こるのかを、詳細な分析から推論する能力の産物である。

人生と業績

 アルビン・トフラーは1928年に生まれた。彼は世界中を旅しているが、学歴も職歴もすべてアメリカ国内である。彼は、ラッセル・セイジ財団客員研究員、コーネル大学客員教授、ニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ教授を歴任し、高名なビジネスコンサルタントでもある。彼はアメリカや海外の多くの大学で名誉博士号を得ており、その著書は数々の賞を受賞している。

 トフラーの著作のほとんどは彼の妻ハイジとの協業によるもので、彼はそのことをいつも真っ先に述べている。彼らは長年のパートナー関係にある。2人ともニューヨーク大学で英語学を学び、その後、戦後のグリニッチビレッジという刺激的で自由奔放な世界に身を投じた。その頃の彼らの興味はもっぱら詩を書くことと小説の構想を練ることに向けられていた。

 トフラーにとっては科学者になることは第一志望ではなかったが、現代における科学とテクノロジーの重要性を若い頃から理解し、やがて技術史に進路をとるようになった。

 トフラー夫妻は数年間ジャーナリズムの世界に身を置き、「フォーチュン」や「プレイボーイ」から当時の第一線の政治、科学、経済誌にいたるまで、幅広い分野の出版物で執筆活動を行なった。1960年にIBMから誘いを受け、コンピュータが社会や組織に与える長期的影響に関する論文を書くことになり、長期間にわたって先端技術に接する機会を得た。この経験から、現在では彼らを世界的に有名にした変化に対する興味を抱き、2人はそれに没頭した。変化に関するトフラーの卓越した3部作の最初の著『未来の衝撃』は、IBMの論文を書き終えた直後に着手された。

 トフラーが世界のビジネスや政治に果たしている貢献は、その特異な才能で主要な変化やその影響を見抜くことにとどまらない。彼は包括的で知的に洗練されたモデルを構築し、幾多の人々が未来について明確な考えを持つ助けとしたのだ。