ファシリテーションには、人の心に配慮するEQ的側面と、議論の合理性を追求するIQ的側面がある。いくら合理的で正しい議論でも、人の気持ちを無視したものでは実現しない。また、人の気持ちに配慮するだけで、切れ味の悪いアイデアでは厳しいビジネス競争を勝ち抜いていけないからである。

 この連載では、EQに配慮しながら切れ味鋭い議論を促すためのツール(フレームワーク)を10回にわたって紹介していく。拙著『ザ・ファシリテーター』で、「ファシリテーションの道具箱」について書いたが、その中にある一つひとつのツールについては必ずしも詳しく解説しなかった。この連載では、それらを取り上げながら解説していきたい。

発散から収束へ

 この道具箱では、アイデアを出すための発散過程、合意形成していくための収束過程、そして研修や実行段階で役立つものの3つに、ファシリテーションのツールを分類して示した。

 建設的な議論の流れを大局的に見ると、(1)まずチーム全員の理解の共有化があり、(2)次に解決策を巡っていろいろな角度からアイデアが出される。発散である。(3)最後に、出てきたアイデアを取捨選択する収束過程に入る。性急に解決策を決めることを急ぐと、創造的なアイデアの小さくひ弱な芽が見過ごされたり、意見を言えない人が出てくる。ファシリテーターは、いまチームがどの過程にあるのか(あるべきなのか)を判断して、適切な問いかけやフレームワークを提案するように心がける。

ファシリテーターの発想

 行きづまった場面を前にして、ファシリテーターは自分で解を考えるのではなく、どうすればチームのアタマが協働して動き出すのかと考える。そのために最適なフレームワークを考え、提案する。