日本企業が成長を続けるには、新興国や発展途上国の成長力を取り込まなければならない。先進国は人口が増えず高齢化も進む。BRICsに代表される新興国は、すでに激しい競争にさらされている。そこでポストBRICsとして、注目されているのが、第8回のフマキラーで取り上げたBOPビジネスだ。
新興国の低所得者向けのBOP ビジネスについては、欧米企業が先行しており、日本企業は出遅れている。が、それはBOPビジネスの定義にもよる。日本は戦後、焼け野原から復興し、先進国の仲間入りを遂げた。その経済社会の仕組みや企業風土には、BOPビジネスに結び付く「種」を、数多く有している。
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BOPビジネスとは何か
まず、BOPビジネスとは何か、おさらいしてみよう。BOPとはBottom (またはBase )of the Pyramidの略称で、三角形で表す所得ピラミッドの最下層にいる人々のことを指す。
BOPは年間所得が3000ドル未満で暮らしている人たちのことで、世界の人口の約7割に当たる約40億人が、この層に属すると推計されている。これに対して、主に先進国で生活し、年間所得が2万ドル以上の層は、1.75億人しかいない。
年間所得は少なくても、人口が多いためBOP の潜在的な市場規模は、日本のGDP(国内総生産)並みの約5兆ドルに上ると見積もられている。BRICsがブラジル、ロシア、インド、中国という国を指しているのに対して、BOPは特定の国や地域を指しているのではないところに違いがある。つまり、BOPに属しているからといって、同質の市場であるということではない。
BOPビジネスの定義は幅広いが、経済産業省が設けた「BOPビジネス政策研究会」が、この2月に出した報告書によれば、現在語られているBOPビジネスのコンセプトは次のようなものだ。