今回紹介するのは「知財」を専攻とする大学院、しかも通信制の修士課程である。吉備国際大学大学院 知的財産学研究科(通信制)は、日本初の知財の通信制大学院であり、しかも弁理士試験の一部免除が可能になる注目の学校である。
岡山県にあるこの学校の知名度は、県内・近県以外ではさほど高くないかもしれない。とはいえ地元での知名度は圧倒的。運営主体である学校法人高梁学園は、九州保健福祉大学や順正短期大学、専門学校、社会福祉法人までを含む加計グループの中核。財務体質も健全であり、学校運営には積極的な姿勢が有名だ。
吉備国際大学は、学部では看護、理学療法、作業療法をふくむ保健科学部がひとつの看板。そして2008年に誕生した新しい大学院は、意欲的な大学の姿勢を象徴的に示すものだ。通学エリアに拘束されない通信制の、しかも大学院は、全国レベルで注目される。実際、この大学院のスクーリングは岡山と東京の2カ所が会場。初手から知財ニーズの高い首都圏を意識しているのは慧眼である。岡山のスクーリングも駅前のサテライトを使い、近畿圏、また九州からもアクセスは良い。スクーリングは土日祝日に集中させている。
カリキュラムは特許・実用新案法、著作権法、意匠法、商標法などを必修の基礎科目として中心に置き、選択の専門科目は国内法/国際法、国内制度/国際制度をバランス良く配置したもの。専門家不足が言われる知的財産の「学」を、真正面から受け止めている。
修了要件は34単位。面接授業を行なう必修科目はぎりぎりに絞り込まれており、社会人の修学の負担は少ない。そもそもこの分野を研究しようとする社会人が多忙でないわけはないことを理解していることが判る。なお、要件には修士論文が課されていることに注目されたい。
いっけん負担が多いように思えるが、修士論文を書き、工業所有権審議会による分野適合の審査を受ける事で、その分野に相当する弁理士試験2次(論文式)の選択科目が免除されるというシステムに対応しており、大きなメリットなのである。このいわゆる「修士・博士・専門職学位に基づく選択科目免除資格認定」について興味のあるかたは、特許庁のホームページを熟読玩味することをお勧めする。
弁理士試験ではこの他、修了後2年間は1次試験(短答式)の「特許法・実用新案法」「意匠法」「商標法」「工業所有権に関する条約」が免除になる。短答対策の必要が半減する試験準備上の特典もあるわけだ。
授業料は、初年度の入学金(15万円)、スクーリング費(5万円)込みで88万円(20年度の例)。通信制の大学院の中ではモデレートなレベルだろう。とはいえ、自宅で学べる有形無形のメリットは、社会人には何物にも替えがたい。
8月から9月にかけて名古屋、大阪、東京、福岡で説明会が開催される予定である。