花王が1987年に発売開始した「アタック」は、洗剤市場で長年のトップブランドだが、今年8月29日に新製品を投入する。「洗浄成分の開発に10年もかかった。関連特許もすべて出願しており、他の追随を許さない」(尾崎元規社長)という自信作だ。
新製品の「アタックNeo」は上左写真のようにコンパクトなのが特徴。従来は1キログラムあったところが、400グラムで同じ回数、洗えるという。しかも、「現在2回行なわれているすすぎが1回ですむのが特徴。6月に企業理念として掲げた“いっしょにエコ”を具現化する第1弾商品」(尾崎社長)。月に900リットル節水できるという。
洗剤には粉末と液体がある。液体市場は全体の4割程度だが、昨年は2ケタ成長を遂げている。ところが、花王は洗剤全体ではシェア4割を誇るものの、液体に限れば2005年以来、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)の「アリエール」の後塵を拝してきた。液体への本格参入によって、花王の屋台骨である粉末洗剤の工場稼働率を低下させるのではないか、という社内の慎重論が足を引っ張ったと目される。それだけに花王の意気込みも強い。「初年度で12%、年間200億円の売り上げを目指す」(尾崎社長)と、液体市場でもトップ奪取を宣言している。
花王が「アタックNeo」を発売すれば、既存の液体洗剤「アタックバイオジェル」と真っ向から競合する恐れがあるが、花王では「当面は併売するが、バイオジェルをフェードアウトさせてもいいと考えている」と幹部は明かす。
発売当初は「アタックNeo」はお試し価格として、店頭価格もやや低めに設定される見通し。目下、川崎工場はフル稼働状態。8月下旬の発売日に、大量陳列作戦を計画中だ。「小型化されたことで、コンビニからの引き合いも増えている」(花王幹部)と販路拡大の機会も狙う。
ただし、小売りの盛り上がりはいま一つ。「87年のアタック発売時のようなブームになるかは微妙」とある小売りチェーンの幹部は話す。消費者にとっては、すすぎを一度にするには洗濯機のモードを変える手間が必要なうえ、消費者にエコ意識が浸透するには時間がかかると見るからだ。
「アタック」は花王最大の看板ブランドだけに、失敗は許されない。小売りサイドの慎重姿勢を跳ね返すべく、総力戦に打って出る構えである。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 大坪稚子)