「テレビ通販にとって“地デジ”に完全移行する2011年は鬼門」。通信販売関係者が迫りくる変革の波に危機感を募らせている。
テレビ通販の市場規模は約4000億円。毎年10~20%増の急成長を続けてきたが、08年の伸び率は1ケタ台が予想され、その後も成長は鈍化する可能性が高いという。そこに地上デジタル化が追い打ちをかけるというのだ。
CATV局はアナログ放送の空きチャンネルを使い、未契約世帯にも通販番組を流してきた。
しかし「地デジでは空きチャンネルが使えず、視聴可能世帯が大幅に減る公算が大きい」。そう語る富士経済の栗田洋一郎主任は「視聴者との接点を増やす新たな戦略が必要」と訴える。
そこで注目を集めているのが、総合商社の動向だ。というのも、業界最大手「ジュピターショップチャンネル」は住友商事傘下で、同2位「QVCジャパン」には三井物産が40%出資。昨年末には伊藤忠商事が「プライム」(同6位)との提携で新規参入した。
物産は昨年末にBSデジタル放送局を開局すると、「放送枠の半分はQVCの番組」(メディア事業部)という、通販ありきの大胆な戦略に出た。住商もBSデジタル放送参入を模索中だ。
さらに中高年の女性中心だった購買層の若返りを狙い、国内最大のファッションイベント「東京ガールズコレクション」を運営する「ゼイヴェル」などと組み、人気女性ブランドの商品を販売し始めた。
また約150もの欧米ブランドを扱う伊藤忠は今秋以降、「他社にない有名ブランドの投入」(繊維カンパニー)で、通販の安っぽさを覆す考えだ。
まさに三つ巴の戦いの様相だが、顧客呼び込み戦略の巧拙が業界地図を激変させるのは間違いない。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 山口圭介)