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岸博幸のクリエイティブ国富論

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糾弾されるべき与謝野大臣の妄言+先週のテーマ「メディア再生のヒント」の補足

 経済の混乱が深まる中、与謝野大臣がとんでもない発言を二つもしました。それがいかにおかしなものであるかをどのメディアも報道していないので、私が解説したいと思います。

その前に先週の補足を

 その前に、先週の説明に少し補足をしたいと思います。先週、マスメディアはインターネットといかに向き合っていくかについて、音楽産業の経験を学ぶべきと説明しました。

 この点について、何人かの方から質問をいただいたので、ここで説明しますと、現時点での音楽産業のインターネットへの対応が成功モデルであると言うつもりはありません。むしろ、未だ世界中の音楽産業はインターネットを取り込んだ新しいビジネスモデル、収益モデルを模索し続けているのが実情です。

 特にインターネットの流通経路としての活用方法については、まさに暗中模索です。携帯電話への配信については少額課金のビジネスモデルが確立されていますが、パソコンへの配信については何が成功の方程式か、まだ誰にも分かりません。アップルのiTune Music Storeは少額課金のビジネスモデルを確立しましたが、その一方で広告による無料モデル(MySpaceなど)、毎月定額で聞き放題というモデル(ノキアなど)と、様々な実験が繰り広げられています。

 そうした中で音楽産業は、ユーザがなかなかお金を払わないという現実に苦しんでいます。面白い数字を紹介しましょう。米国のインターネット上は日々無数の音楽ファイルが流通していますが、その中で正規(=有料)ダウンロードの割合は、平均すると20曲中1曲だけです。米国の音楽配信サイトの一つであるLalaはユーザに対して、(1)1曲99セント払えば自分のパソコンにダウンロードできる、(2)1曲10セント払えばLalaのサーバからいつでもその曲を聴ける、(3)お金を払わなくても1回は曲を試聴できる、という3つの選択肢を用意していますが、この会社のサーバに蓄積された曲へのアクセス状況をみると、1000曲中99セント払ったのは72曲、10セント払ったのは108曲、無料での試聴が820曲です。

 そうです。違法ダウンロードが当たり前になる中で、ユーザはレコーディングされた音楽にはお金を払わない習慣を身につけてしまったのです。その現実に対して音楽業界は、デジタルやネットで代替できないもの(コンサートなど)に力を入れ、ネットから少しでも多く収益が上がるよう試行錯誤を重ねるなど、まさに音楽のあらゆる出口で売上を積み重ねているのです。マスメディアが音楽業界から学ぶべきは、市場(ユーザ行動)の変化を受け入れ、過去のビジネスモデルに拘泥せず、やれることは何でも果敢にやるという姿勢だと思います。

与謝野大臣の妄言

 さて、それでは今週の本題です。与謝野大臣がとんでもない発言を国会で連発しました。一つは、「(規制改革会議に関連して)規制緩和はすべて善という信心がはやったが、間違った信心だ」、もう一つは「(小泉内閣での政策金融改革は)世界が順調に成長していくという前提の経済学で、世界が同時に不況になることをまったく想定していなかった。間違いだった」という発言です。一体これらの発言は何なのでしょうか。

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著者プロフィール

岸 博幸
(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授)

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス非常勤取締役を兼任。

この連載について

メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。

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