【第70回】 2009年12月25日
追い詰められたマスメディアによる
グーグル的ネット世界への反乱が始まった
最近は政治や経済政策絡みのことばかりを書いてきましたが、実は今年後半から、マスメディア/コンテンツ産業とネットの関係が大きく変化する兆候が出ています。2010年はネット上の常識が変わる年になるかもしれないのです。今年も最後ですので、この点について総括しておきたいと思います。
今の競争構造ではメディアは
ネット上で課金しても儲からない
これまで何度か書きましたが、ネットが普及し出してからマスメディア/コンテンツ産業の収益は急速に悪化しました。それは、ネットが視聴者と広告の両方を奪ってしまったからです。
マスメディア/コンテンツ産業は基本的に垂直統合型のビジネスモデルであり、自社でコンテンツの制作から流通までを牛耳ってきました。そこでは、コンテンツの制作力もさることながら、媒体毎のコンテンツの流通独占が収益の源泉となってきました。
しかし、ネットという新たなコンテンツの流通網が普及したことで、マスメディア/コンテンツ産業は流通独占を喪失して収益が悪化したのです。かつ、それらの産業の企業はネットに積極的に進出したのですが、収益改善にはほとんど貢献しませんでした。その理由は大まかに言って二つです。
一つは、ネット・サービスのレイヤー構造の中でマスメディア/コンテンツ産業はコンテンツ・レイヤーに属するのですが、ネット上でのコンテンツの流通独占はプラットフォーム・レイヤー(検索サービス、SNSなど)に奪われてしまったため、現状のままでは広告・課金のいずれのビジネスモデルを採ってもネットは儲からない、ということです。
もう一つは、ネット上ではコンテンツは無料という意識が根付いたことです。違法ダウンロードの氾濫はその典型です。加えて、検索サービスが検索結果にネット上の新聞記事を掲載するときも、記事を一時的に複製するにも関わらず新聞社の許諾を得ず対価も支払わないことが当たり前となっています。
つまり、マスメディア/コンテンツ産業にとってネットは儲からない場所になってしまったのです。しかし、今年後半になって、こうした状況を変えようという動きが活発化しています。
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著者プロフィール
- 岸 博幸
(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授)
1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス非常勤取締役を兼任。
この連載について
メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。
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