2008年に入ってからというものの、上場企業の倒産が相次いでいる。そして9月1日、今年14社目となる上場企業倒産のニュースが伝えられた。東証ジャスダック上場のシステム開発会社、トランスデジタルである。同社は8月28日、29日と2日連続で不渡りを出し、事実上倒産。9月1日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。負債総額は約26億円(7月末時点)。9月30日付けで上場も廃止される。

 何といっても今回の倒産劇の最大の特徴は、『株価1円企業の倒産』である。トランスデジタルの株価は今年4月以降、10円台前半からじりじりと下がり始め、6月18日にはついに1ケタ台となった。8月に入ってからも値下がりは止まらず、ついに8月14日に整理ポストでも監理ポストでもなく、倒産もしていない企業としては、異例の「株価1円企業」となり、8月20日と21日には2日連続で終値ベースでも1円をつけた。その後、2円、3円と微妙な値動きをしながらも、不渡り以降は再び1円に戻り、民事再生法適用申請後は、連日買い注文の100倍以上の「1円の売り注文」が出て比例配分での取引がされている状態が続いている。

 株価が1円に限らず、1ケタ台というのはまさに異常事態である。ある意味、市場から三行半をつけられているわけであり、市場から撤退しろといわれているようなものである。しかし、トランスデジタルは、株価が1ケタ台になってからも2ヵ月以上居座り続けた。

 あえて「居座り続けた」という言い方をしたのには理由がある。それは、そもそもトランスデジタルが“上場に値しない”企業であったからである。事業展開、企業買収、資金調達の脈絡のなさに加えて、スポンサーや役員の相次ぐ変更。しかも最後は、手形不渡り前に申し立てるべき民事再生手続きを2度目の不渡り後に申し立てるというおまけつき。あらゆる面で「段取りの悪さ」が際立っているのである。詳しく見ていこう。

「強気の期首予想で、結果は大赤字」
という不誠実な業績予想

 トランスデジタルは少なくともこの9年間で合計して220億円以上の赤字を出している。その中で黒字を出したのは2004年度のたった1年だけ(しかも利益はわずか1億1300万円。なんとか黒字になったという範囲である)。つまり、1勝8敗。特に直近の3年間の成績はひどい。2006年度は▲22億円、2007年度は▲56億円、2008年度は▲42億円と毎年大幅な赤字が積み上がっている。同社の2008年度の連結売上高が35億円であるので、同年の赤字額は売上高を上回る規模ということになる。

 さらにもっとひどいのは、その赤字に至るまでの過程である。利益の期首予想とその結果があまりにもかけ離れているのだ。例えば、2007年度。期首予想は10億円のプラス、しかし結果は56億7000万円の赤字。続いて2008年度。期首予想はプラスマイナスゼロ、期中で25億円の赤字に下方修正、そして結果は42億7000万円の赤字。つまり、毎期、強気の予想だけを立てて、結果がまったく伴わないという、株主から信頼されない不誠実なやり方を続けていたのである。

 そんな経営状況の中でなぜトランスデジタルが生き延びることができたのか。それは、同社の主力商品がまさに「株」であったから。上場していたおかげで、資金が足りなくなる都度、転換社債や新株予約権発行などによるエクイティ・ファイナンスで資金調達をすることができたからである。しかしそのほとんどは、脈絡のない新規事業やM&A、借入金返済に充てられており、本当の意味で会社を安定・成長させる事業に投資されることはなかった。言葉は悪いが、どうにかこうにか無理して市場からかき集めた資金をせっせとドブに捨てていたようなものなのである。