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弁護士・永沢徹 企業乱世を読み解く

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“安い買い物”となるか?
野村のリーマン「2ドル買収」

――タダより高いものはない?!

 リーマン・ブラザーズの破綻から10日後の25日、野村ホールディングス(以下、野村)がリーマンの「アジア・太平洋部門」「欧州・中東部門」の両部門を買収することが発表された。このほかにも29日、三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)がモルガン・スタンレーに巨額出資し、筆頭株主となることも決まった。相次ぐジャパンマネーによる米国金融機関の再編で、「日本勢の逆襲か?!」という声も聞こえてくるが、いずれにしても野村とMUFGの両社は、海外拡充を狙って“勝負”に出たことは間違いない。

買収額がたった“2ドル”?!
タダ同然で買った「欧州・中東部門」

 その中でも注目すべきは、野村によるリーマン「欧州・中東部門」の買収である。この買収の最大のポイントは、買収金額がたった“2ドル”であること。一見、タダ同然に見える買収であり、ついその金額ばかりが注目されてしまいがちである。

 そこで今回は、「なぜ2ドルという金額になったのか?」という根拠にも触れながら、買収後の課題についても考えてみたいと思う。前々回(第46回)「リーマン破綻で突きつけられたグローバル企業倒産手続きの法的問題点」と併せて読んでいただければ幸いである。

 まずは、今回の買収条件について確認しよう。「欧州・中東部門」だけでなく、同時に行なわれた「アジア・太平洋部門」の買収条件と比較して見てきたいと思う。それぞれの条件をおおまかにまとめると下記の通り。

■アジア・太平洋部門
・買収金額:2億2500万ドル(約240億円)
・買収条件
 1)従業員数(株式/債券/投資部門の約3000人)→ 継承
 2)事業インフラ(システム/PC等)→ 継承
 3)資産(株/債権/不動産等)→ 継承せず
 4)顧客口座 → 継承せず

■欧州・中東部門
・買収金額:2ドル(約200円)
・買収条件
 1)従業員数(株式/投資部門の約2500人)→ 継承
 2)事業インフラ(システム/PC等)→ 継承せず
 3)資産(株/債権/不動産等)→ 継承せず
 4)顧客口座 → 継承せず

 上記に共通しているのは、「資産」と「顧客口座」を引き継がないということ。これらを引き継ぐためには入念なデューデリジェンス(査定)【※注1】を行なわねばならず、今回「資産」と「顧客口座」の継承を見送ったことにより、迅速な買収を決定が可能になり、優秀な社員を引き留めるチャンスが高まった。

【注1】
「デューデリジェンス」の意味ついては、第45回で紹介しているため、そこを参照いただきたい。

英米法特有の「約因」という
概念から生まれた「1ドル契約」

 「アジア・太平洋部門」と「欧州・中東部門」の買収条件の大きな違いは、何といってもケタ違いの買収金額である。かたや“2億ドル”、そしてもう一方は“2ドル”と、天地ほどの開きがある。ではなぜ「欧州・中東部門」が“2ドル”になったのか――。

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著者プロフィール

永沢徹
(弁護士)

1959年栃木県生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験合格。卒業後の84年、弁護士登録。95年、永沢法律事務所(現永沢総合法律事務所)を設立。M&Aのエキスパートとして数多くの案件に関わる。著書は「大買収時代」(光文社)など多数。永沢総合法律事務所ホームページ

この連載について

100年に一度の経済危機に見舞われ、企業を取り巻く環境は大幅に悪化。“企業乱世”ともいえる激動時代の経済ニュースを、弁護士・永沢徹が法的な視点を加えながらわかりやすく解説する。

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