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オバマ大統領がウォールストリートと戦うのはなぜか――米国新金融規制案について池尾和人・慶応大学教授に聞く

【オバマ政権の新金融規制案の要旨】
金融危機の再発を防ぐために、米国主導で進んできた金融自由化、総合金融機関化の方向を転換する内容で、銀行・証券の業務分離を定めた1933年のグラス・スティーガル法の再来だと金融界は衝撃を受けている。規制内容は預金を預け入れる商業銀行と投資銀行では異なっている。商業銀行に対しては、①ヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンド(PEF。未公開株を手がけるファンド)への投資や所有の禁止、②自己資金勘定による高リスク投資を制限し、顧客の要望にもとづくケースに限る。つまり、事業範囲を制限し、預金を使ったリスクの高い投資を抑制する。投資銀行に対しては、①市場からの借入れ(負債)に上限を決める。つまり、規模を制限して、「大きすぎて潰せない」事態を解消する。商業銀行と投資銀行の規制が異なっているので、必然的に両方を兼営することはできなくなると見られる。

池尾和人
池尾和人(いけおかずひと)
昭和28年1月12日京都市生まれ。京大経済学部卒。京大経済学博士。岡山大助教授、京大助教授、慶大助教授などを経て、平成7年より慶大経済学部教授。

―オバマ米大統領が1月20日に突然発表した金融機関に対する新規制案は、国際金融界に衝撃を与えた。

 新金融規制案の目的はまだ不明だし、制度設計の詳細などは発表されていないから、現時点では、解釈に幅を持たさざるを得ない。

 米国ではこれまで、保守派とリベラル派という対極に立つ経済思潮が30年周期で交代してきた。リベラル派にせよ保守派にせよ、登場したてのときは清新だが、20年、30年続くと劣化するからだ。今回の金融危機も、1981年のレーガン政権以来の保守派の経済政策、いわば“新自由主義政策”の累積の結果ともいえる。とすれば、今はリベラルな経済政策への30年ぶりの転換点にあり、新金融規制案はその象徴ととらえることができないわけではない。

 一方で、この規制案はマサチューセッツ州の補選に民主党が敗れた直後であり、また、ゴールドマン・サックスの四半期ベース決算が史上最高となったという発表と同時期であったことから、オバマ政権は金融界を敵役にすることで国民の支持を回復するという狙いがあるのかもしれない。強欲さに取り付かれた金融機関を嫌う大衆迎合であり、ポピュリズム極まれりという解釈だ。

 現時点では、いずれの解釈も可能だという感じだ。

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著者プロフィール

辻広雅文
(ダイヤモンド社論説委員)

1981年ダイヤモンド社入社。週刊ダイヤモンド編集部に配属後、エレクトロニクス、流通などの業界を担当。91年副編集長となり金融分野を担当。01年から04年5月末まで編集長を務める。主な著書に「ドキュメント住専崩壊」(共著)ほか。

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