◆JALに感じる二つの理不尽

 日本航空(以下「JAL」)に関しては「そこまでやるのは、どうなのか?」と思うことが二つある。一つは、政府保証融資をはじめとする公的支援であり、もう一つはその支援の条件とされる企業年金改革に含まれる、同社OB(退職者)への年金支給削減だ。

 経営に失敗した一私企業に過ぎないJALに公的支援を行うことのおかしさは、7月1日付の本連載に書いたエルピーダ・メモリー社のケースと基本的に同じだ。

 全世界的にエアラインの経営は苦しいが、日本には、全日空(以下「ANA」)という健全に経営されていて日本を代表できる航空会社がある。JALをどうしても存続させなければならない理由などない。たとえばJALが運行する路線が健全に経営されている内外のエアラインに引き継がれて運行されるなら、ユーザーにとって何の問題もないし、料金や安全の面でもより好都合かも知れない。

 筆者個人としては長年親しんできた「JAL」に郷愁を感じなくもないが、業績に立ち直りの気配がないままお金の無心(資金調達)にだけ明け暮れるようなこの会社経営と、どうにも親しみを感じない近年の「JAL」のロゴマーク(失敗作ではないか?)を見ていると、「もういいよ」という気分になる。

 さて、公的支援の問題を脇に置くとして、最近のニュースで気になるのは、JALが、公的支援の条件を整えるために、既に年金額が裁定されたOBに対する給付を含めて年金支給額の削減を行う方針であるらしいことだ。

 これに対して、JALのOBは反対の声を上げ始めている。「朝日新聞」(7月18日朝刊)によると、受給権を持つ退職者の3分の1以上がネットを通じて年金減額に関する署名をしたという。記事によると、具体的なカット率はまだ提示していないとのことで、会社側は「今後も会社の現状を説明し、理解を得るべく努めていく」と述べているそうだ。

 ちなみに、朝日は「年金削減 日航OB3割超反対」と見出しを打っているが、「3割超」は既に行動で反対を表明した人の数であって、OB全体の意見を確認した上で年金支給削減反対者の比率が3割強程度だということではないので注意したい。それに、仮に受給者の多数が削減に賛成しても、それで少数者の財産権をないがしろにしていいのかについては、慎重な判断が必要だろう。

 JALのOBたちが年金削減に反対するのは当然だと思う。同社の企業年金が経営上の重荷になっていることは確かで、この会社の年金制度は直ちに改める必要があるが、手段としてOBの年金支給に手を着けるのは不適切だ。