【第23回】 2008年03月11日
投資信託の人気投票に意味はあるか
「日経金融新聞」が1月一杯で休刊となった。代わりに、新しい週刊媒体「日経ヴェリタス」が2008年3月に創刊されるという。日経金融新聞の読者としては休刊がなんとも残念だが、日本には、投資を知的に楽しみたい投資家の期待に応えるような媒体が少なかったので、新媒体には大いに期待したい。
先日、その「日経ヴェリタス」の創刊準備号を入手した。48ページのタブロイド紙で、カラーを多用した、読みやすい紙面だ。内容も盛りだくさんで、今後を期待させるものだったが、どうにも気になる企画が一つあった。
「日経金融新聞」でいちばんに思い出すのは、機関投資家の投票によるアナリストランキングだが、このランキングに味をしめたのか、ファイナンシャルプランナー(FP)による投資信託の人気投票という企画が登場した。創刊準備号には、資産分散型(バランス型)の投資信託について、FP103人が「自分で買うならこれ」という基準で、1、2、3位を選び、順に5、3、1点を与えて集計したランキングが載っている。ランキング表と解説記事、上位10ファンドの運用者のコメント、FPが何を重視してファンドを選んだかという分析などが出ていて、ほぼ3ページを費やしている。
ファンドの運用者は、セルサイド(証券会社)のアナリストなどと比べて世間的に注目されにくいので、彼らを取り上げる企画があることは大いによいと思う。
しかし、「FPが選んだファンド」という情報には、ほとんどなんの価値もないし、FPが選んだファンドが、これから投資するのにいいファンドであると読者に受け取られる可能性があるという意味では、有害でさえある記事だ。「(FPが)自分が買いたい投資信託」という思わせぶりな前提で投票させているのだから、そう取られる可能性は十分あるだろう。
記事に取り上げることは宣伝にもなるから、日本経済新聞社と運用会社のあいだに、FPの投票という、一見客観的な仕掛けを介在させたいというアイディアだったのかもしれない。しかし、そもそもFPには「将来運用成績がいいと期待できるファンド」を選ぶ能力はない。そういった能力は、投信評価会社などのプロにもないわけで、まず、この点を読者にはっきり言わないようでは新聞社の良識に疑問符が付く。FPたちのファンド選択基準には、諸々の手数料コスト(が小さいこと)が2番目にきていたが、あえていえば、手数料についてなら投資家もアドバイザーも判断できるので、この点を重視したFPは、できる範囲のなかで最善の回答をした。
しかし、編集部が訊いたチェックポイントに、ポートフォリオそのものの出来のよしあし(投資銘柄のウエートの適切性や運用方針との一貫性を客観的に評価することは可能だ)が入っていないし、運用者へのインタビューも相手の好きに話させているだけで、ほとんどPR記事並みの内容だ。編集部が運用というものをまったく理解していないということだろう。申し訳ないが、勉強せずに、取材だけで書けるほど運用は甘くない。
加えて、もう一つ今回の企画には致命的な欠陥がある。資産配分計画との整合性と総合的な手数料を考えると、そもそも合理的な投資アドバイザーはバランス型ファンドを選ばないはずなのだ。FPの皆さんは、メディアに親切だから編集部の意図を汲んで協力したのだろうか。有名なFPで回答者に入っていない人が何人かいるが、そういう人こそが「いいFP」として注目できるかもしれない。
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著者プロフィール
- 山崎 元
(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員)
58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。
この連載について
12社を渡り歩いた資産運用の現場に一貫して携わってきた視点から、「資産運用」の方法をどう考えるべきか懇切丁寧に説く。投資家にもわかりやすい投資の考え方を伝授。
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