米国の逆イールドは42年ぶりの大きさとなる-1.06%まで拡大!
米国の逆イールドは6月30日に-1.06%まで拡大した。米国債の2年物と10年物の金利差は、通常は10年物の金利が2年物の金利を上回るという「順イールド」になる。しかし、その反対の現象である「逆イールド」が起き、金利差が-1.0%を超えるレベルが6月下旬から定着しているのだ。
2年債の利回りが10年債を上回る逆イールドが発生したのは2022年3月29日だ。2019年の夏以来となる約2年半ぶりの出来事だった。あれから1年3ヶ月が経過した今、逆イールドはますます大きくなっている。6月30日時点の逆ザヤの-1.06%は、今回の逆イールドで最大レベルであり、1981年以来42年ぶりの大きさとなる。
通常、債券の利回りは年限が長くなるほど返済リスクを踏まえて金利は高くなる。将来の経済や物価が不確実で見通せない分、投資家は高い利回りを求めるからだ。そのため1年債よりも3年債、3年債よりも10年債、10年債よりも20年債の方が利回りは高くなる。当たり前の話だ。今起きている2年債の利回りが10年債の利回りを大きく上回る現象は普通は考えられない。どうしてこのようなことが起きているのだろうか?
逆イールドは景気後退のシグナル。過去の多くがこの経験則に従ってきた
理由は、短期金利は足元の金利動向の影響を受けやすく、長期金利は長期の景気見通しの影響を受けやすいからだ。足元の金利動向とはずばり、米連邦準備理事会(FRB)の政策金利である。フェデラルファンド(FF)金利は2022年3月にゼロ金利(0.0%~0.25%)を解除した後、ものすごい急ピッチで利上げし現在は5.0%~5.25%まで上昇。実に5.0%もの金利上昇である。急ピッチで利上げをする目的は、急速に進展しているインフレ抑制のためである。この利上げに大きな影響を受ける形で短期金利は急騰。一方、長期金利は景気見通しの影響を受けるため「こんなに金利が上がれば景気は減速するだろう」との観測が強まり金利上昇が抑えられる。中長期的な景気減速と、それに伴う利下げを同時に織り込んでいるのだ。
一般的に逆イールドは「景気後退のシグナル」と解釈される。FRBが金融引き締めに動くことで景気が冷え込む展開を投資家が読み取り、債券市場で起こった現象が時間をおいて、その後の景気動向に反映されるからだ。過去の動きを見ると経験則に従うことが多い。逆イールドは実際の景気後退の1~2年前に発生している。2000年代初頭のITバブル崩壊やリーマン・ショックの前にも出現していた。直近では米中貿易摩擦が激化した2019年に一時発生し、その後の新型コロナ感染拡大で世界経済が大幅なマイナス成長に陥った。
先進国で蔓延する逆イールド。主要10カ国中、日本を除く9カ国で発生
実はこの逆イールドは米国だけではなく先進国で蔓延している。「G10」と呼ばれる主要先進10ヵ国のうち、日本を除く9カ国で債券の長短金利の逆転が発生する異例の事態が起きている。インフレが長期化する中、先進国の中央銀行は大幅な利上げを行っており、金融引き締めが継続している。逆イールド拡大で景気の先行きに対する警戒感が一段と増している。英イングランド銀行は6月22日に政策金利を4.5%から5.0%に一気に0.5%引き上げた。米国と同じレベルである。逆イールドの深さもカナダで-1.2%、ドイツで-0.75%と非常に大きくなっている。
肝心の米国景気だが、先週発表された消費者信頼感指数、耐久財受注額、新築住宅販売件数などの経済指標は軒並み予想を上回り、金融引き締めが続く中でも経済は底堅い。また、FRBが実施した銀行へのストレステストの結果が発表され、大手23行が不況時でも十分な自己資本を維持可能との見通しが示され備えも十分である。本来ならば、これだけ大きな逆イールドが発生すれば、すでに景気のあちこちに綻びが見られ、マーケットも身構えるはずなのに、2023年の年初からのパフォーマンスを見るとNYダウは+3.8%とプラスを堅持、ナスダックに至っては+31.7%と大幅高となっている。1983年以来、40年ぶりの上昇率だ。
金融引き締めでも米国経済は底堅い。深刻な景気後退は回避されそう
格付け大手フィッチ・レーティングスは6月21日に、2024年の世界の成長率見通しを従来の2.4%から2.1%に引き下げた。「金融政策の調整とそれが経済に及ぼす影響が長期化する」との見方からだが、この程度の減速ならば「堅調な経済成長が続く」と表現した方がよさそうだ。インフレも鈍化する兆しが見えており、経済に悪影響を及ぼすショックは弱まりつつある。米国の-1.06%もの逆イールドは数字こそ非常に大きいが、これはやはり短期で最速ペースで大きな利上げをおこなった面が色濃く出ているのが要因であって、実際の景気減速は「それほどでもない可能性が高い」というのが私の見方である。
ところで、為替市場ではドル円レートが再び145円を付けて円安が加速している。FRBはあと2回の利上げを行う可能性を示し、一方の日銀は大規模金融緩和を継続するという対照的なスタンスの違いから日米金利格差が拡大していることが背景にある。2022年10月21日に151.94円という円安を付けたものの日銀による為替介入で円高へ転換。今年1月16日には127.21円まで押し戻されたが、そこからほぼ一直線で円安が進行している。「再び為替介入されるのではないか?」「そろそろレートチェックがあるのでは?」と為替トレーダーはやきもきしていると思うが、こちらの動きも目が離せなくなってきた。日本企業の業績や株式市場にとって為替はもはや重要な要素ではなくなってきているのはご存知だと思うが、海外投資家からすれば「日本の資産を魅力的にしているのは円安」という見方は根強くある。
利益確定売りで下押しも、個人投資家の買い意欲高まり日本株は好調持続
6月第3週の海外投資家は3604億円を売り越し、13週ぶりに売りに転じた。12週連続での買い越し累計額は6兆1000億円で、その6%にあたる。日経平均株価は12週間で6300円もの急ピッチな上昇となっていたため、6月末の需給悪化を見越して利益確定売りとなった。あくまでもポジション調整であり、海外投資家の「日本買い」の流れは終わっていないと見るべきだ。一方、個人投資家は3446億円の買い越しとなり、4月の第1週の2103億円以降初めて顕著に大きな買い越しとなった。今更ながら「おぉっ!」という感じだ(笑)。なお、日本の年金基金の売買を反映する信託銀行は4074億円の売り越しで、売越額は前週(821億円)の約5倍だった。リバランス目的の売りが顕著だったことがわかる。
テンバガー(10倍株)候補を組み入れ。詳細は7月5日のWebセミナーで
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」。先週は週間&月間ベースでの過去最高値を更新した。来たるべき金融相場に向けて6月は新興系グロース株を3銘柄組み入れた。もちろんテンバガー、すなわち10倍株の候補だ。着々と準備を進めていることがおわかりいただけると思う。
いよいよ7月5日(水)に毎月恒例のWebセミナーを20時より開催する。テーマは『金融相場に向けて着々と準備中』。海外投資家の現状と見通し、金融相場に向けた投資戦略、今後大きなパフォーマンスが期待される個別銘柄についても詳しく解説。セミナー後半では皆さまからのすべてのご質問にお答えする形で進めていく。会員限定だが、10日間無料お試し期間中でも参加可能。セミナー当日14時までのお申込み(15時URL配信)。毎回大きな盛り上がりを見せているが、誰でも参加できるのでご都合がよろしければぜひどうぞ。非常に重要な話をするので、多くの皆さまのご参加をお待ちしております。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。
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