入構制限で学生もまばらな本郷キャンパス(東京大学)

新型コロナウイルス禍が教育行政や学校教育の現場に大きなインパクトを与えている。これまで遅々として進まなかった情報通信技術(ICT)を活用した学びが急速に浮上し、新しい学習指導要領が示す2020年代の教育の実現を後押ししている。コロナは教育界にまん延していた前例主義やしがらみの詰まった“パンドラの箱”を次々に開け放とうとしている。箱を閉じたとき、そこに何が新たに加わり、残るのか。教育ジャーナリストの後藤健夫さんと一緒に、いま起きている出来事の意義を探っていこう。(ダイヤモンド社教育情報)

いや応なしに始まったオンライン授業 

 文部科学省が10月16日、「対面授業が半数未満の大学名を公表する」旨発表したことで波紋が広がっています。こうした対面授業再開圧力の背景には、学友との交流やサークル活動などができるよう「キャンパスを開いてほしい」という学生からの声もあります。

 ただそうした学生の声を反映させることが目的ならば、“半数”とすることにどのくらいの意味があるのか、むしろ、新入生へのフォローアップ調査をした方が筋はいいと考えます。 

 文科省が8~9月に全国の大学・短大や高等専門学校を対象に行った後期授業の形式に関する調査では、回答のあった1060校の8割は対面と遠隔(オンライン)授業を併用するものの、対面授業の割合が3割以下と回答した学校が370校あったことから、これらを再調査対象としており、11月上旬に学校名を公表するとしています。なお、11月11日現在、公表された様子は見られません。

 なぜ、こうしたを調査するのか。大学の授業料は何に対する対価なのか。オンライン授業は対面授業に劣るのか。こうした一連の動きをどのように考えたらいいのかといった疑問が次々に浮かんできます。

 文科省は基本的に、対面授業でなければよろしくないという考え方です。一斉休校期間に高校などで行われた動画配信などのオンライン授業を「遠隔指導による家庭学習」と位置付けて、授業とは呼んでいません。ここで、急速に導入されたオンライン授業をどのように捉え、単位を認定していくのかという大きな問題が浮かび上がってきます。

 文科省の調査の背景には、対面授業の方がオンライン授業よりも価値がある、という考えが見え隠れしています。これが授業料に対する考え方にストレートに反映されるとしたならば、国立大学を含めて学費は返還されるべきでしょう。果たして本当にオンライン授業は対面授業に劣るのでしょうか。

 さらに言えば、単位認定もままならず、卒業できない学生が続出してしまいます。むしろ、感染拡大気味の都心の大学は、オンライン授業で対面授業と同等の価値を生む努力をするとともに、感染から学生や教職員を守っているのです。ですから、このような考え方から公表された大学をどう捉えるのかは難しいことです。少なくとも一律に語ることはできないでしょう。