東北大学募集定員の30%を非一般選抜に、という国立大学協会の目標に一番熱心に取り組んでいる旧帝大の東北大学 Photo:PIXTA

前回は、2020年内に合否が分かる総合型選抜(AO入試)や学校推薦型選抜(指定校推薦入試)の状況について話し合った。年明けから初めての大学入学共通テストを皮切りに、一般選抜(一般入試)が始まる。新型コロナウイルスに翻弄され、前年よりも多くの受験生が過酷な一般入試に直面することになりそうだ。ここで考えておきたいことが、こうした情勢の変化に応じた適切な動きが高校の進路指導で取れているかという問題である。(ダイヤモンド社教育情報、撮影/倉部和彦

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評定平均値をどのように判断するのか

 2021年1月に初めて実施される「大学入学共通テスト」を回避すべく、なんとか年内に合格を勝ち取りたいと考える高3生は多い。総合型選抜(AO入試)や学校推薦型選抜(指定校推薦入試)に殺到するかと思われたものの、そこには落とし穴が待ち受けていた。

後藤 前回は調査書と成績の問題でお話が終わりました。その続きですが、ある方が高校にコンサルに入った。業者の模試を活用して、そこで出た成績と個々の先生方が生徒に付けている成績とでマトリックスを作ったところ、相関が見られなかった。

【大学入試2021】高校の進路指導に潜む闇安田賢治
大学通信 常務取締役

安田 つまり、先生方の付ける成績は学力が必ずしも尺度ではなかったということですね。その生徒が真面目にやっているかという生活態度のようなものが評価されている。

後藤 同様のことを数年前に耳にしました。京都大学で高校からもらった学生の評定平均値と入学後の成績の相関が全くなかったというのです。

安田 それは中学入試でもよく聞く話ですね。補欠で入った子が一番になって東大に入ったとか。

後藤 そう考えると、高校での成績評価に対する大学側の信頼は薄い。調査書を読んでくれているのかという疑心から高校側からの大学に対する信頼も薄い。だから高大接続と言いながらも、お互いの信頼関係があまり成立していない。

安田 それは大学と企業でも同じですね。理工系の学生に対してはこの科目をきちんと履修したかといった話は聞きますが、文系は良い成績だからどうだということは聞いたことがない。

【大学入試2021】高校の進路指導に潜む闇 後藤健夫
教育ジャーナリスト&アクティビスト

後藤 早稲田をギリギリで卒業した学生と駒澤を首席で卒業した学生とどちらが優秀かと言われても判断に困るように、このことは指定校である高校の学校間格差の問題につながります。学校の成績をどう見るのかについて真剣に考えないとまずいと思う。

 決め手になるのが、年明けに初めて行われる大学入学共通テストです。ところがそれは、国立大学協会の共通一次試験以来、センター試験もずっと大学のものとして行われてきた。これはやはり高校のものにもして、高校卒業資格と大学入学資格の双方にしないといけない。成績に関して一つの軸を設けないと、お互いが信頼しない状態が続きます。

安田 同じ4.0なら開成でもほとんど進学しない高校でも今は同じ扱いです。同じ評定平均値が並んだときにどちらの生徒を取るかという話になってきますね、究極的には。

後藤 不当に評価されることも出てくる。それってそろそろやめないといけない。そのための大学入試改革のはずですが、現状は全然違うところに行っていますね。