【大学入試2022】東大推薦入試、各大学の募集定員はどうなる?今後の受験状況を展望2021年に大躍進した神奈川県立横浜翠嵐高校(横浜市神奈川区)

大波乱だった2021年入試の結果は出そろった。これから5年間の18歳人口の推移予想を見ても、基本的に大学入試は易化していくものと思われる。大きく変わった東京大の推薦入試状況、大学の募集定員を巡る問題点、首都圏と地方との進学に関する格差など、一足早く2022年以降の大学入試を展望してみよう。今回も、大学通信常務の安田賢治氏と教育ジャーナリストの後藤健夫氏による舌鋒が冴える。(ダイヤモンド社教育情報)

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6回目の東大推薦入試

安田 前回も触れたように、2021年の東大入試ではいろいろな話題がありました。合格者数ランキングで東京都立日比谷が9位に、11位には神奈川県立横浜翠嵐が入りました。

後藤 日比谷が典型だと思いますが、東大を受けることへのこだわりを持つ雰囲気があります。実際には夢破れた受験生も多い。22年入試で日比谷がどのような実績を出せるかは未知数です。

 英語4技能対策に、業者が費用を一部負担して検定試験を受けさせるなんてこともやっていたようです。もうそういうことはなさそうですが(笑)。日比谷に通う生徒は比較的恵まれた家庭の子が多いですしね。

安田 日比谷の合格者の半分以上が今回は文系学類です。文系数学の問題がやさしかったからか、女子の合格者が多かった。数学がやさしくなると女子合格者が増えるという傾向はありますからね。東大全体でも、女子合格者の比率が初めて2割を超えました。

 前回は触れられませんでしたが、東大の学校推薦型入試(定員100人)では、女子の合格者が42人となり、合格者92人の5割弱に達しています。一般選抜の倍以上の比率です。今回、推薦の志願者は267人で実倍率は2.9倍でした。

後藤 男女別学校は1人、共学校も男女各1人(合わせて2人)までだったものを、別学校は3人、共学校は4人まで推薦可能枠を広げた。今回、4人合格の学校はなかったものの、3人合格の学校はあったようですね。

安田 私立では麻布、公立では秋田と山形東の3校です。特に山形東は、初の推薦合格者が出ただけではなく、山形県としても初めての推薦による東大合格でした。

後藤 新潟県からは新潟が1人合格しました。これで、まだ1人の推薦合格者も出していない“空白県”は1つだけになりましたね(笑)。

安田 そこがどこかはさておき(笑)、初めて推薦合格者を出した高校の中には、高崎(群馬)、県立千葉(千葉)、立川(東京)、横浜翠嵐(神奈川)、米子東(鳥取)といった名門公立校も多く含まれています。

後藤 推薦枠を広げたことは大きかったと思います。今年で6回目となりますが、例年と比べて合格者数が3割近く増え、学校として初めて東大推薦合格者を出したところが34校もありました。その中には、毎年多くの一般選抜での合格者を出している筑波大学附属駒場や女子学院の名前もありました。枠が拡大して、生徒も取り組みやすくなったし、学校側も推薦しやすくなったんでしょうね。

 開成の生徒に以前聞いたことがありますが、東大は推薦で入るのは大変で、普通の入試の方が楽だそうです(笑)。3倍近い志願倍率は一般選抜と大差ありませんし。

安田 今年、公立校が好調だった理由の一つに、15年の首都圏中学入試は受験率が底打ちした時期で、大都市圏では公立高に進んだ優秀層も多かったことがあったと思います。

後藤 通信制のN高(沖縄)は4人推薦して1人合格。N高みたいなところは推薦入試の条件は整いやすいので全部合格を勝ち取らないと。一般選抜では理IIIを含む3人が合格したので合計4人となりました。これからは自分の時間を大切にしたいなど積極的にN高を選んだ入学者が増えていきます。それに加えて東京女子御三家など有名中高一貫校を中退して入ってきた生徒もいますからどんどん実績を出していくでしょう。