ICTで問われる教員の知的好奇心

安田 多くの学校はICT(情報通信技術)への対応が遅れていますね。

後藤 スマートフォンを持っていない大学の先生って結構います。定年まであと数年だからICT関連はもういいですという中高の教員も。

安田 うちでは学校にアンケートするのですが、現状で郵送とネットが半々くらい。10年前にはほとんどネット利用がなかった。公立校では、県によっては外部アクセスが禁じられていました。いまでもパソコンのUSBにフラッシュメモリを刺せなかったりする。情報漏えいやウイルス感染を恐れてのことなのでしょうが、これから高校では「情報」を教えるというのにこれで大丈夫なのでしょうか。個人情報保護とは別の仕組みを学校は整えないと。

後藤 理工系学部で将来パソコンを使いたくない学生が教職に就くとも聞いていますし。いまでは「そんなこと聞いてないよ」と言うかも知れませんが(笑)。先のギガスクールの話にしても、現場では1人1台、家に持ち帰っていいとかダメとか、そんなことはどうでもいい話だと思います。何のために教えるのか、という目的がちゃんと分かっていれば。

安田 パソコンの場合、5年もすれば機材の更新をどうするのかという話になりますよね。中学で支給されているものが、義務教育ではないとはいえ、高校では生徒負担でいいのか。体育の球技のボールと同じように必要なら各自が使えるようにすべきではないのか。そうでないと、パソコン教室復活という話になってしまいます。

後藤 自治体におカネがないから公立高校では配れない。経済的格差を乗り切っていかないといけないのですが、学校側は導入に消極的です。現状ではそもそも先生が使いこなせませんから。

安田 教員の研修の問題もありますね。支援センターに行く代わりに、教職員支援機構が制作した短いビデオを職場で就業時間中に見ることができるようにしないと。家で見ていたのでは持ち帰り残業です。教員にこそ、生涯学習、リカレントのための余剰時間を与えないと。