仲間はずれにされて、深く傷ついたAさん。これって「いじめ」なのでしょうか? イラスト/ソノダナオミ

「いじめ予防授業」で問う、これは「いじめ」なの?

 私は、教育学部を卒業して中高の教員免許状を持っている弁護士です。弁護士登録したばかりのときに、先輩弁護士の誘いでNPO法人化前の「ストップいじめ!ナビ」に参加し、その活動を行う中で、中学・高校での「いじめ予防授業」を作成しました。現在はNPO法人「ストップいじめ!ナビ」の理事を務めています。

 私は、この「いじめ予防授業」を主として私立中高一貫校の中1から高1までを対象に行っています。それがどのようなものか、生徒さんたちの反応を含め3回に分けてご紹介していきたいと思います。

 実際に行っている授業の例から、何が「いじめ」になるのか、まずは一緒に考えてみましょう。冒頭のイラストも参考にして以下の事例を読んでみてください。

仲良しのA、B、C、D、Eさんの5人は、カバンにおそろいのキーホルダーを付けていました。

ある日、AさんはBさんからある歌手のDVDを借りましたが、Aさんはそれをすぐに返しませんでした。

数日後、やっとAさんからDVDを返してもらったBさんは、盤に傷がついていることに気付きます。Bさんは内心ムッとしながらも、そのことをAさんには言いませんでした。

C、D、Eさんにそのことを話すと、3人は「Aさんはひどい」と言って怒りました。それ以来、B、C、D、Eさんは昼食を4人だけで先に食べる、教室移動の際にAさんだけ置いていくなど、Aさんと距離を置くようになったのです。

ある日、AさんはB、C、D、Eさん4人のカバンから、5人おそろいのキーホルダーがはずされ、Aさんが見たことのない新しいキーホルダーが付いていることに気付きました。

そのときから、Aさんは学校に自分の居場所がないと感じ、つらい、悲しい、学校に行きたくないと思うようになりました。

(出所)『教師もできるいじめ予防授業』より要約

 みなさんは、これを読んでどのように思いましたか。Aさんの受けている行為は「いじめ」なのでしょうか。