brendan mcdermid/Reuters ヘッジファンドの米ブリッジウォーターの創業者レイ・ダリオ氏

 中国共産党の支配体制に対する米国の政治姿勢は過去5年で大きく様変わりした。それには正当な理由がある。しかし、米ウォール街の一部の人々は、依然として1990年代の世界に住んでいる。

 大手ヘッジファンド、米ブリッジウォーターの創業者で億万長者のレイ・ダリオ氏が今週、ニュース専門放送局CNBCの番組で示した鈍感さは特筆ものだ。対中国投資と中国政府の人権侵害について質問された同氏は、米国と中国を同等に扱ってこう述べた。「米国の状況を目にしたとき、私は米国では一体何が起きているのかなどと言い、わが国の人権やその他の問題を理由に、米国への投資を見送るべきだろうか」

 ダリオ氏は中国が「独裁的なシステム」を持つことを認めた(マイケル・ブルームバーグ氏が2020年に習近平国家主席のことを「独裁者ではない」と主張したのよりはましだ)。しかし、中国の「人を消す」政策について問い詰められると、同氏は「それが彼らのやり方だ。われわれにはわれわれのやり方がある」と述べた。それを黎智英(ジミー・ライ)氏に伝えてはどうか。同氏は香港の自治に関する約束を守るよう中国に求めただけで、収監されている。

 こういった発言は、米国人をウォール街嫌いにさせ、企業幹部が米国人である以前に「世界市民」であることを批判される原因になる。ダリオ氏は自分が好きなところへ投資する自由を望んでいるが、ウォール街の大物が米国の統治システムを侮辱するメッセージを出せば、有権者は政治的なプロセスを通じて彼らの特権を取り上げるだろう。

 多くの米企業が独裁主義の国々に投資しているのは事実であり、投資家はその一つ一つについてわざわざ道徳的な宣言をする必要はない。しかし、2021年の中国は1995年の中国ではない。並外れた国力と技術力を持つ厳格な専制体制であり、世界における米国の利益と個人の自由を直接的に脅かしている。

 ダリオ氏は、自ら望めば合法的に中国に投資することは可能だが、米国の法の支配と財産権がなければこれほど成功することはないだろう。同氏が中国政府と米政府明確に区別できないのであれば、道徳上の盲点があるということになり、ビジネス界の賢人として傾聴する価値はない。

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