これからの中学受験生が直面する「2030年の大学入試」の見取り図東京大学駒場キャンパスの中心に位置する1号館は、戦前エリート教育の頂点である「旧制第一高等学校」本館を受け継いだ

少子化が、大学入試と中等教育の現場に与える影響は極めて大きい。中学受験に臨む小学生にとって、これからの大学入試のあり方は大きな関心事となるだろう。その選抜機能がどのように変容していくのか、大学事情に詳しい後藤健夫氏による短期集中連載「2030年代の大学入試」で見ていきたい。これは、中高の学校選びの際にも欠かせない視点となるからだ。(ダイヤモンド社教育情報)

新型コロナが開いた「パンドラの箱」

 2020年春から始まった新型コロナ禍の3年間、大学入試と中高の教育現場を巡る不都合な真実がその姿を露呈している。「コロナが開いたパンドラの箱」と題して、これまでオンライン授業国立大の2次試験学校の施設設備(校舎・教室・机)という切り口で、コロナ禍の影響について取り上げてきた。

 そこに学校教員の働き改革やICT(情報通信技術)の学校への本格的な導入の動きも重なり、教育の現場は構造的な変化を余儀なくされている。2021年度から始まった大学入学共通テストで見られるように、学校教育法改正(2007年)の際に「学力の三要素」として提示された内容が、大学入試でも問われるようになってきた。これに加えて、課題解決が求められ、思考の転移(類推のように、他のケースに同じ思考を当てはめて活用すること)=過去問が通用しない世界へと、大学入試も構造的に変化してきている。

 少子化により受験を巡る“競争”は緩やかになったものの、これまで“競争”によって支えられてきた学習“意欲”は減退し始めているのではないだろうか、と気になる。そこで“意欲”の減退を押しとどめる役割を担うものとして、新しい学習指導要領で教育現場にもたらされた「探究」に注目したい。

 足元の大学入試では、2月の「一般選抜」を回避する動きは年々強まり、年内に募集される「学校推薦型選抜」や「総合型選抜(旧来のAO入試)」に受験生がシフト、そこで重視されるといわれる「調査書」に書き込むための実績づくりが生徒の関心事となっている。中には調査書への記載をもくろんで、ボランティアを学校行事で展開する高校もあるほどだ。ボランティアとは元来、自発的なもののはずなのだが、往々にして手段が目的化しやすい教育の世界では、これもその一端を示しているのかもしれない。