少子化時代の部活動と中高一貫化の優位性
少子化は、高校の部活動にも影響を与えている。少子化で高校では学級減になっている上に、「勉強部」のような部活動も登場するなど多様化しており、生徒の所属は分散している。一つの部に所属する生徒数は減少し、野球やサッカー、ラグビーであっても、チームを組んで大人数で競技するものは校内だけでは部員が集まらず、他の高校と連合してチームを編成することが余儀なくされてきている。全体練習は参加高校のどこかに集まって行うため、生徒の負担も重い。いずれ甲子園にも花園にも、こうした連合チームが登場するのではないだろうか。
さらに、小変異が続く新型コロナウィルスへの感染はまだまだ収まらず、生徒の負担は重い。少人数のチームや個人で試合ができる卓球や陸上などに生徒が集まるなど、団体競技から個人競技へシフトするようになっているというのだ。
廃部に追い込まれる部活動も少なくない。教員の働き方改革とも相まって、部活動を地域団体に組み込もうとする動きがある一方で、オンラインを通して全国から高校が参加する「合同部活」という形態も現れている。
IT・プログラミング教育サービスのライフイズテックが仕掛ける「Life is Tech! School X」のように、学校横断型のデジタル部活でゲームのアプリ開発を行うような動きも出ている。通信制であるN/S高では、美術部がオンライン上で難なく展開されている。地域やオンラインへと高校の部活の場が移行していくことにより、生徒の活動を把握しにくくなっていく。
こうした変化は、授業以外で生徒と接する機会がなくなって、生徒の性格や活動状況を把握しづらくなり、高校の「調査書」作成の負担をかえって増やすことになりかねない。将来的には、「調査書」のあり方は問い直されていくかもしれない。
2030年に向けた大学入試で大きな役割を果たすことになる「探究」は、先述したように“競争”の代替物として、生徒の学習意欲を保つための役割が期待されている。生徒には、「探究」へのファイティングポーズを取ることが求められ、自分の好きなこと、興味関心、課題解決に取り組むことが奨励される。とはいえ、それがどこまで情動的なスキルの向上に結び付くのかは別の問題である。そこには、適切な伴走者が必要だろう。
一方、授業で生徒を「探究」に誘うには、生徒の主体性や自主性を重んじることになる。伴走者の役割を担う教員は、これまでのように生徒に「教え込む」ことからの脱却が求められる。そのためには、アンラーニング(学習棄却)と「探究」的な学習を指導する上で熟練が必要となる。教員にも大きく変化が求められるわけだ。
これからの大学受験を考えた場合、中高一貫校の優位性は強まる一方となる。英語教育を見れば分かるように、語学の十分な修得には時間がかかり、中高6年間を一貫した方針で学んだ方が効率的である。都立高の入試で「スピーキングテスト」を課すことが物議を醸している。その背景には、このような形で公立中学の英語教育に緊張感を与えなければ、大学が求めるスキルまで英語4技能が到達しなくなっている現状がある。
公立の名門進学校が、茨城県のようにすべて中高一貫化する様相が全国的にもますます強まっていくだろう。それにより、公立進学校の間での序列に異変が生じる可能性がある。