「札幌南、札幌北」、北海道公立校の頂点は2強の争いに北海道大への進学者数で、道内の公立進学校は競っている(北海道大正門) Photo:PIXTA

短期集中連載「2030年の公立進学校」。東京に続き、2回目となる今回は北海道を見ていく。広大な面積に、東京の公立校よりも多い200超の全日制高校と二つの中等教育学校がある。市町村の85%が過疎に悩まされている北海道で、札幌市周辺への一極集中が続いている。道内の公立進学校は今後どうなるのだろうか。(ダイヤモンド社教育情報)

道民の半分は札幌都市圏に

 北海道は、中国・四国・九州15県を合わせて徳島県を引いたものと同じくらいの面積がある。この広大なエリアに、全日制の公立高校は道立が190校、市町村立が23校もある。福岡県よりわずかに多い約514万人の北海道に対して、前回取り上げた約1400万人の東京都内にある公立高校は186校だから、道内で公立高校を維持していくのはたやすいことではない。

 北海道の人口は、2015年から20年の5年間だけでも約3%減少している。179ある市町村のうち152は過疎市町村であり、人口が増えている自治体は札幌市、千歳市、恵庭市、江別市など札幌都市圏が中心となっている。一方で、函館市、小樽市、旭川市、釧路市は人口を減らしている。こうした人口動態は、地元の公立進学校の今後のあり方にも大きく影響を及ぼす。

 約200万人の札幌市とその周辺自治体を併せた札幌都市圏には、道民の半数弱が住んでいる。とはいえ、札幌市の30年の0~19歳の将来推計人口は26万7000人と、20年比で1割強減少している。大都市圏への移住と少子化の進行が並行している状況だ。
 
 開拓使改め北海道庁は1886年に始まる。道内最初の旧制中学として、札幌尋常中学(現・北海道札幌南高校)と函館尋常中学(現・北海道函館中部高校)が設立されたのは、1895(明治28)年のことだった。その後は、北海道庁立小樽中学(現・北海道小樽潮陵高校)のように「道庁立」が冠せられた。
 
 また、地域に学校がなく、道立の分校として町が設置した例や市や町が設置した「地域立」などをルーツにした高校もある。そうした「地域立」の学校も、第二次世界大戦後に「道立」へと移管された。中には三笠高校のように、設立時の「三笠町立」から「道立」となったものの、近年の少子化による募集難から廃校を求められた結果、今度は「三笠市立」となった例もある。

 このように、道内では「道立」といった言い方がなじみにくい面もあるようで、現在の校名は「北海道立」ではなく「北海道」と冒頭に付けられている例が多い。今回の記事中では、いずれの学校も冒頭の「北海道」を省略した。
 
 道立高校は、19の通学区域(学区)に分かれている。道内全域を対象にしているのは、寄宿舎も備えた登別明日(あけび)中等教育学校のみとなっている。この他、札幌市を中心に市立の高校もある。道内にもう1校ある中等教育学校は、北海道開成高校を改組した札幌市立札幌開成で、こちらは札幌市内が通学区域となっている。公立高校に併設型の中学はない。国立校としては、道内に四つの高専(高等専門学校)があり、その募集定員合計は624人だが、定員割れが続く学校もある。

 道内には、国公立の大学も多く配置されている。国立大としては、旧帝国大学である北海道大、北海道国立大学機構を組んだ小樽商科大・帯広畜産大・北見工業大、室蘭工業大、札幌・旭川・岩見沢・函館・釧路にキャンパスを持つ北海道教育大、旭川医科大がある。

 公立大には札幌医科大、札幌市立大、公立千歳科学技術大、公立はこだて未来大、名寄市立大、釧路公立大がある。今年4月からは、私立の旭川大が旭川市立大になる。こうした国公立大の学部募集定員は合せて8100人強となる。偏差値50を超える私立大は酪農学園大くらいということもあり、国公立大とはすみ分けている。