公立進学校の過半は札幌に集中

 地元の公立進学校にとっては、道内の国公立大にどのくらい合格を得るかが第一目標となる。「出身高校の所在地県別 入学者数」(文部科学省『学校基本調査』2022年)によると、北海道内の高校を卒業した2万1636人のうち、北海道に学部がある大学への入学者は1万4521人を数え、道内での進学率は67.1%となり、この地元進学率は全国で最も高い。

 国公立大への進学率も28%と比較的高い(全国平均は21%)。東京の大学には1割が進学するが、道外に進学するケースは極端に少ない。北海道は広い。道内を駆け回る学校関係の営業車は1年で地球一周分の距離を走ると言われるほどだ。道内の大学に通うとはいえ、下宿する学生は少なくない。経済的な負担を考えると、有名大学でなければ道内の大学へということなのだろう。

 その一方で、北海道大の地元占有率が減少傾向にあることは、道内の高校の大きな課題なのだろう。少子化の波は大きく、高校進学段階で選抜機能が緩慢となっており、小学校で習う算数の「通分」の概念を理解せずに中学を卒業する生徒が少なくないと、道内の教育関係者は嘆く。地元進学率が高いだけに、高校入学までの教育が沈滞すれば道内の大学進学に与える影響は大きい。

 図1図2には、2022年「国公立100大学合格力」ランキングから北海道の公立高校を抜粋してランキングした。「北海道札幌南高等学校」といった具合に、正式名称では「北海道」を冒頭に冠しているものもここでは省略した。市立では札幌市と函館市の高校が載っている。所在地には、市町村に加えて道立高校19学区も併記した。道内全域から募集しているのは登別明日中等教育学校のみで、もう一つの中等教育学校である札幌開成は札幌市が学区となり、こちらには国際バカロレアコースが置かれている。

 図1と図2には、東京大と北海道大の合格者数に加えて、国立10大(旧7帝大と東京工業大・一橋大・神戸大)と国公立大の合格者数合計も示した。では、まず図1のベスト20校から見ていこう。

 1位から4位まで札幌の東西南北4校が占めている。その順は、北海道大と国立10大の合格者数の多い順である。1位札幌北と2位札幌南の合格力の差は、北海道大の合格者数の差にあるといっていい。旧制一中を前身とする札幌南は伝統的に東大をはじめとする道外の難関大に卒業生を送りこんでいる全国的な名門校だ。

 東大や国公立大医学部合格者数で比肩するのは、私立中高一貫男子校で寮も備えた北嶺(札幌市清田区)くらいしかない。1986年に中学校が開校した北嶺は、札幌南高校の校長や北海道教育委員会教育委員長を歴任した山口末一が、同じ学校法人希望学園の札幌第一高校に続いて立ち上げた学校だけに、札幌南とはゆかりがある。

 札幌北は旧制札幌高等女学校が前身で、1950年から共学化して現在の校名になった。近年、北海道大を中心に進学力を増している。最寄り駅は地下鉄南北線北24条で、北海道大学の北側にある。私服で自由な雰囲気の札幌南とは対照的に、伝統的な制服が残る。3位札幌東は旧制札幌市立高等女学校、4位札幌西は旧制二中がそれぞれの前身だ。ベスト20校の半分は石狩学区の道立と札幌市立で、いずれも札幌市内にある。

 政令指定都市とはいえ、札幌には市立高校が7校もある。1950年には約31万人だった人口が急速に増加、それに対応した結果でもある。9位札幌旭丘、24位札幌新川、28位札幌藻岩、30位札幌清田の4校がベスト40に入った。他に、1962年開校の市立札幌開成高校が2015年に改組された12位札幌開成中等教育学校も上位にある。