首都圏「県立名門校」の地殻変動――神奈川・埼玉・千葉の抱える事情浦和、湘南と並ぶ県を代表する進学校だった「千葉」は復活途上(千葉市中央区)

連載「2030年の公立進学校」。東京、北海道、北関東に続き、4回目となる今回は、南関東にある首都圏3県について見ていこう。東京と神奈川・埼玉・千葉の3県で、日本の人口の3割を占めている。これら3県の公立進学校の勢いには、東京からの距離感が影響しているようにもみえる。(ダイヤモンド社教育情報)

国公立大不足が顕著な首都圏3県

 日本人の3割が住んでいる首都圏1都3県。うち神奈川埼玉千葉3県の人口合計は第1回で取り上げた東京の1.5倍強にも達している。今回は、これら南関東3県にある公立進学校の現状について見ていこう。

 男女別学校がいまも公立トップ校に残る埼玉は、北関東3県の中でも群馬と同じような雰囲気を持っており、この点で、神奈川や千葉とはだいぶ様相を異にする。一方、公立中高一貫校化への対応では、県立はいずれも1~2校にとどまり、残りを政令指定都市が担うという点で三つの県は似通っている。その意味で、各県内の政令指定都市と中核市の分布は、のちに触れるように公立進学校のあり方にも影響を及ぼしている。

 国公立大の医学部医学科は千葉大と横浜市立大にあるのみで、それに準じる存在が防衛医科大学校(埼玉・所沢市)となっている。その結果、多くの医師志望者が進む先は、東京を中心とした私立の医科大ということになる。

 同様の事情は、この3県にある国公立大全体に通じる。人口に比して、圧倒的に大学数も募集人員も少ない。国立大は各県に一つずつあり、募集人員合計は5000人強となる。その規模と入学難度を考えると、旧一期校で10学部を擁する千葉大の存在感は大きい。関西圏での神戸大に比肩する存在だ。旧二期校の横浜国立大と埼玉大は後期入試に3割以上を充てている。国立の高専(高等専門学校)も木更津に1校あるのみで、印象は薄い。

 公立大は、医学部を擁する横浜市立大が比較的大規模だが、それ以外は神奈川県立保健福祉大、川崎市立看護大、埼玉県立大、千葉県立保健医療大など医療福祉の専門職養成に主眼が置かれた小規模大学となっており、募集人員をすべて合わせても1200人強にとどまる。

「出身高校の所在地県別 入学者数」(文部科学省『学校基本調査』2022年)で、首都圏1都3県の都県内に学部がある大学への進学率を比較してみよう。東京の67.9%は別格として、埼玉29.4%、千葉34%、神奈川39.3%と、国公立大での募集人員の差が反映しているようにみえる。北関東の茨城19.3%、栃木24.2%、群馬33.5%の並び順と対照すると興味深い。進学校からは、東京の有名私立大への進学者が多くを占めることが想像できるだろう。