車選びは「あこがれ」から、実用へ
「確かに、車の嗜好には変化が起きています。レクサス一辺倒ではなく、人と違うもの、を求める傾向がどんどん強まっています。また、もっと安い価格の自動車の需要も高まっています」と、話すのは、トヨタ・カンボジアの河端政明社長。
トヨタがカンボジアに進出したのは1993年。国連など国際機関が輸入したトヨタ車の修理、メンテナンスが主な目的だった。その後、95年には現在の場所(ロシア大通り)に社屋が建ち、2009年に正式に輸入代理店の認定が下りた。現在、カンボジア国内の車の約7割がトヨタ車ともいわれている。
「実は、カンボジアのトヨタは、レクサスを1台も売っていないんです」。河端社長によれば、カンボジアで走っているレクサスは、アメリカ、欧州、中近東などから並行輸入されているもので、国内の店舗では販売をしていない。ただ、販売してきたのは、ランドクルーザー、ハイエース、ハイラックス、プラドなど大型の車であることに変わりはない。一昨年からはフォーチュナー(トヨタの新興国向けSUV。日本未発売)を導入した。
変化があらわれたのは昨年後半から今年。トヨタ・カンボジアは昨年10月にカムリ、今年1月にはカローラの販売を開始した。さらに、小型ミニバンのアバンザの販売もスタートし、人気車種となっている。
プノンペンの町は狭い。ここ1年で、トヨタ車だけではなく、これまでよりもコンパクトな車ががぜん増えたのが分かる。路地裏も含め、多くの道が舗装されたプノンペンで大型車を必要とする人たちがどれだけいるか。「成功のシンボル」「あこがれ」から、より実用的な目的へと、本格的なモータリゼーションが始まっている。
今年1月、プノンペンで販売が開始されたカローラ。お披露目のセレモニーは、市内高級ホテルで盛大に行なわれた【撮影/木村文】「メディア・テストドライブ」ではカローラが人気
この流れを受けて6月末、トヨタ・カンボジアは初めての「メディア・テストドライブ」を開催した。国内の新聞や自動車専門雑誌の記者7人を招き、実際に車に乗り、運転してもらおうという企画だ。そのこと自体が、車の大衆化を物語る。
当日は、カムリ、カローラ、アバンザに分乗し、プノンペンから南部の海浜リゾート・シアヌークビルまで約4時間のドライブ。さらに現地では、ホテル内の私有地にカーブや急ブレーキ、急加速などができる特別コースを設け、試運転した。
記者たちはいずれも20代後半から30代前半。「スポーティでスタイリッシュ」と人気が高かったのはカローラだ。ある記者の言葉が印象的だ。「カンボジアの車はレクサスやランドクルーザーなどが中心だったが、昨今の渋滞に嫌気がさしているんだ。やっと、カローラサイズの車が現れ、僕らの気持ちが分かってもらえたな、と思った」
トヨタ・カンボジアが主催した同社車のメディア向けテストドライブ。カローラ、アバンザ、カムリが使用された【撮影/木村文】


