あえて英語力を問わない
求人が増えている訳

「ここ最近、日本企業は“攻めの投資”が続いており、求人数自体が大幅に増えているというのが現状です。その中で、『英語力を条件とする求人』の割合は一定数あります。意外に思われるかもしれませんが、グローバル化が叫ばれている中であっても『英語力を条件とする求人』が激増しているというわけではありません。それは、身だしなみや敬語と同様に、英語の素養はビジネスパーソンが身に付けるべき当然のスキルであると考えられ、あえて英語力を必要条件として出さない求人も増えているのです」と木下編集長は明かす。同社の「グローバル採用の実態調査2014」によると、「英語力を求める求人割合」では、“簡単な読み書きや会話ができる”初級レベルを求める割合は48%、“ビジネスの現場で商談や交渉ができる”上級レベルを求める割合は22%ほどであるという。

 そんな中で特に企業サイドからニーズが高いのが、専門性を身に付けたミドル層(30~40代)の求人だという。アベノミクスによるグローバル化への加速もあり、海外展開を見据えた業容拡大に、課長クラスの人材が必要とされているのだ。

 中でも英語スキルを持つ30代へのニーズが高いという。「今の30代のビジネスパーソンが学生の頃はまだ、日本企業の海外進出が現在ほどでなく、英語力を条件に入れた採用があまり行われていなかったということがあります。それより下世代の20代になると、学生時代から英語力に対する意識が高く、アウトプットの能力は確実に上がっているようです」(木下編集長)。

 つまり30代や40代以上の世代にとって、英語力の習得は、下の世代に追われる形で“急務”となっているのだ。

多様化する
英語習得のスタイル

出典:DODA調べ。調査方法:DODA転職支援サービスに登録した約34万人(2013年度)のデータと、実際に転職した約1万人のデータ
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 職種別に見ると、かつては英語力が問われたのは、商社や一部メーカーに限られていたが、現在は、金融やメディカル系の専門職や、モノづくり系のエンジニアやクリエイティブなど、あらゆる分野に及んでいる(右図参照)。「法務担当者や人事担当者などの企画・事務系の部署でも、企業の海外市場への進出や海外企業買収などで、海外とのやりとりが増え、英語力が必要とされるようになってきています」(木下編集長)。

 そうしたことで、今企業では、部署や仕事内容で限定することなく、社内全体での英語力の育成に力を入れる機運が高まり、語学スクールと法人契約を結んでの社内研修や、福利厚生として受講料を一部負担する企業が増えている。また、利便性の良いSkypeを利用したオンライン英会話はますます隆盛で、語学スクールではビジネス英語向けのカリキュラムを充実させている。ビジネスパーソンが自分のレベルやペースに合わせて英語力に磨きをかける環境は整っているのだ。

 東京オリンピック開催の2020年に向け、今後は国内においても、英語を使う場面がさらに増えることが予想されている。キャリアアップのためだけでなく、社内での仕事の幅を広げる意味でも、ビジネス英語力を身に付けることはもはや必須といえそうだ。