新型コロナが開いた「パンドラの箱」
2020年春から始まった新型コロナ禍の3年間、大学入試と中高の教育現場を巡る不都合な真実がその姿を露呈している。「コロナが開いたパンドラの箱」と題して、これまでオンライン授業、国立大の2次試験、学校の施設設備(校舎・教室・机)という切り口で、コロナ禍の影響について取り上げてきた。
そこに学校教員の働き改革やICT(情報通信技術)の学校への本格的な導入の動きも重なり、教育の現場は構造的な変化を余儀なくされている。2021年度から始まった大学入学共通テストで見られるように、学校教育法改正(2007年)の際に「学力の三要素」として提示された内容が、大学入試でも問われるようになってきた。これに加えて、課題解決が求められ、思考の転移(類推のように、他のケースに同じ思考を当てはめて活用すること)=過去問が通用しない世界へと、大学入試も構造的に変化してきている。
少子化により受験を巡る“競争”は緩やかになったものの、これまで“競争”によって支えられてきた学習“意欲”は減退し始めているのではないだろうか、と気になる。そこで“意欲”の減退を押しとどめる役割を担うものとして、新しい学習指導要領で教育現場にもたらされた「探究」に注目したい。
足元の大学入試では、2月の「一般選抜」を回避する動きは年々強まり、年内に募集される「学校推薦型選抜」や「総合型選抜(旧来のAO入試)」に受験生がシフト、そこで重視されるといわれる「調査書」に書き込むための実績づくりが生徒の関心事となっている。中には調査書への記載をもくろんで、ボランティアを学校行事で展開する高校もあるほどだ。ボランティアとは元来、自発的なもののはずなのだが、往々にして手段が目的化しやすい教育の世界では、これもその一端を示しているのかもしれない。