2026年をメドに、同じ学校法人である学習院大に吸収される学習院女子大(戸山キャンパス/東京・新宿区)

まだまだ必要な女子大という存在

――現在発売中の『本当に子どもの力を伸ばす学校 中高一貫校・高校 大学合格力ランキング』(ダイヤモンド・セレクト2023年8月号)に掲載されたお二人の対談で、「女子受験生の動向を見れば、大学入試が分かる」というお話がありました。そこで今回は、何かと話題の女子大を巡る情勢について、お話いただければと思います。

井沢 表だって語られませんが、女子のみという求人票が女子大の就職課に来るそうです。男女差別の問題もあって、男女共学の総合大には出せない職種も、どれくらいあるかは別としても現実にあるわけです。  

後藤 化粧品とかそうでしょうね。女性を求める業種には、人のぬくもりのように、デジタルから抜け落ちるリアルの部分があるのでは。

井沢 高齢者対応要員に女性がほしいという生損保など金融機関もありますね。メガバンクなどでは、こっそりと一般職採用を再開する動きも出ているようです。

後藤健夫(ごとう・たけお)
教育ジャーナリスト。1961年愛知県生まれ。南山大学卒業後、河合塾へ。独立して大学コンサルタント。早稲田大学法科大学院設立に参加。元東京工科大学広報課長、入試課長。現在、執筆のかたわら、武雄アジア大学(佐賀県)の構想実現化ディレクターを務める。 Photo by Kuniko Hirano

後藤 結婚しない理由の上位に「自立したい」という女性の志向の変化もあります。「女子大はオワコン」か、という議論もありますが、必ずしもそうではない。東大の新入生の女性比率が2割を超えたと話題ですが、難関大の女性比率はどこもまだまだ低い。

井沢 東大も大学院では女性比率が3割だそうです。早稲田大や慶應義塾大でも学部は4割いかないくらいですし。

後藤 ルッキズム(外見重視主義)を避けたい生徒になどにも、女子大へのニーズはまだまだあると思います。ただし、従来の女子大に多かった、家政や文学をいまさらやっていられるか、という面もある。

 それに対して、女性の社会での活躍を実現する、適切なコンテンツ(カリキュラム)を据えられるか。いまは定員を割れていないが、例えば、英語コミュニケーション学科のようなものを今後どうするか、といった問題意識があればまだ大丈夫なのですが。

井沢 女子大の学部学科構成には問題が出てきています。そうした中、これまで女子大にはなかった学部設置の動きが出ています。例えば京都女子大は10年前(2011年)に法学部をつくりました。情報系のデータサイエンス学部もこの春に立ち上げました。

後藤 売り手市場ということもあり、女子大は就職面で頑張っています。これまで女子大になかった工学部をつくるなど、時代的な要請に応える動きも出ています。

井沢 一方で、女子大から中堅大に女子受験生が移る動きも続いています。かつてはバンカラな気風で、男子学生が多かった、あの国士舘大や拓殖大でも女子学生が増えていますから。  

後藤 その点では、日東駒専(日本大、東洋大、駒澤大、専修大)の中でも、東洋大に学ぶ
ところがありそうです。学部の女子比率は4割を超え、人数でも1万2000人近い。関西では近畿大ですね。

――キリスト教系の上智大、立教大、青山学院大などで女子学生比率が高いのは昔からで、イメージ的にも沿うかなと思いますが、「なぜ東洋大」というのはありそうです。