女子大で資格を取ることの意味

後藤 かつての日本の大学は、学部で学びすぎていたともいえます。大学の卒業要件は124単位以上です。例えば法曹資格を取るのにも、主に法学部の4年間で対応できました。司法制度改革で、現在は3年制の法科大学院も加わっています。

 学士で法曹資格を得られるのは世界的にも珍しい。こうしたことから日本は学位へのリスペクトはなく、資格へのリスペクトになった。国際社会の中で学位が重んじられるのに、こうしたところでも国際通用性に欠けることは残念な話です。大学が一生懸命になっているグローバル化って、国際通用性があってのことですからね。

井沢秀(いざわ・しげる)
大学通信情報調査・編集部部長。1964年神奈川県生まれ。明治大学卒業後、大学通信入社。「夕刊フジ」をはじめ、各紙誌で大学に関する多くの連載を持つなど、精力的に発信を続けている。 Photo by Kuniko Hirano

井沢 大学設置基準の大綱化で、第二外国語も体育も不要になりました。

後藤 大学設置基準の大綱化で一般教養課程をなくしたはずが、学部の4年間一般教養を学んでいるようになっています。いまの学部教育は一般教養的なものに加え、“テーマ”として法律などをやっており、実践的な取り組みはあるものの高度化したわけではありません。

 だから、本当に専門的に学ぶには大学院に行くしかありません。アメリカの大学の構造がそうです。これがグローバルスタンダードなのでしょう。もう、大学の根本的なあり方から変わらなければいけない時代です。

井沢 そういえば、灘高校生が司法試験に受かっていましたね。それは推薦で東大に入るわけです(笑)。

後藤 もう勉強しなくてもいいのだから。情報通信の高度化で、社会全般に学ぶための情報は格段に増えています。それによって勉強ができる高校生が司法試験に受かるようになるわけですが、全体として高校生の学ぶ量というのは減ってきているのではないでしょうか。

――いまの学生はまじめに授業に出ていると聞きますが。  

後藤 昔に比べて大学に入るのが楽になりましたから。その分大学に入ってから、人生に1回くらいは一生懸命に勉強したほうがいいのでは(笑)。

――それはさておき、女子大の教育内容(カリキュラム)が時代に合っていないのではないかという問題もあるように思えます。

井沢 資格系では、看護、保育や幼稚園、小学校教諭などがあります。もう少し幼保の就職後の待遇が良くなればと思いますが。  

後藤 保育士の待遇は、保育は福祉なのでこれ以上大きく上げられないでしょう。幼稚園教諭、保育士の免許は、短大でも専門学校でも取れるわけです。どういう生徒が保育に進むのか調べましたら、親も保育士でその後継ぎ、他の学科に行き場のない人、あとは先生に言われて、という感じで、あまり意欲的な志望ではないんですよね。

 元来、就学前はゴールデンエイジとも言われて、社会情動的スキルを培う重要な時期なので、もっと意欲的に進学してほしいですね。そのためにも幼保の就職後の待遇改善を求めたいところです。

 この前、うちの息子の幼稚園の先生が、近所のコンビニでレジ打ちしているのを見て驚きました。四大卒で保育士の資格を取っても、つぶしが利かない。

――それでも不況になると、「手に職」とばかり資格取得に走りがちです。

後藤 看護師の場合は短大でも3年間あるいは四大で学ぶことにも意味があるのですが、それは6年制の薬剤師同様、医療でチームを組む医師と対等になるよう、地位向上のためにという要素もあります。実際には、功を奏していないみたいですが(笑)。それでも医療の高度化には十分に対応できていますし、看護教育系の雑誌は、大学の業界誌よりも教育の事例や新しい取り組みなどとても充実しています。

井沢 保育士も大変な仕事なので、もう少し待遇が良くなるといいのですが。そういえば、短大でも小中学校教員の二種免許は取れますね。  

後藤 「二十歳にしては頑張っていますね」という評価をされています。とはいえ、なり手がいないので、二種免許でもどんどん採用されているのが実情ですが。 

――それは教員のレベルが下がりますよね。いくら本格的な少子化が迫っているとはいえ。

後藤 いまの大学生は、卒業式ではなく学位授与式です。卒業ではなく学位取得なのです。ところが教員免許だけは卒業しないと取得できません。どこかおかしいんですよ、教員養成システムが。