今回の合格力ランキングの1位灘は菊正宗・白鶴・櫻正宗が、2位甲陽学院は白鹿という地元の有名蔵元が母体となって創立した男子校である。写真は灘中学校・灘高等学校(神戸市東灘区) Photo:PIXTA

国公立大学合格力トップ10校

 失われた30年間は、地域間の所得格差を拡大していった。大都市圏以外の地方における大学進学状況を見ると、そのことが痛感される。都市部の私立大に下宿して通わせるだけの経済力が衰えているため、学費が私立大のおおむね半分以下で済み、下宿の必要もない地元国公立大志向が強まっている。とりわけ各県の公立進学校にとっては、旧帝大を筆頭に、地元難関大にどのくらいの卒業生を送り込むかが使命とばかりに、その数を競う傾向もうかがえる。

 こちらの記事で、卒業生概数に比べてどのくらいの国公立大合格者が出たのか、「国公立大合格率ランキング」について、全国進学校の状況を見てみた。この時は単純に合格“率”だけで見たが、今回は各大学の難易度も勘案した「合格力」という観点から、改めて「国公立大合格力ランキング」を見ていきたい。

「国公立大合格力ランキング」は国公立178大学(2023年度に私立から公立化した旭川市立大は除く)の全合格者を対象にしている。国公立大の学部募集定員の合計は10万人ほどで、私立大も含めた大学全体の約2割を占めている。

 図1(24位まで)と図2(50位まで)には、「国公立20大合格力ランキング」の順位と合格力も併記した。昨年までは難関大に焦点を当てた「国公立10大合格力ランキング」として、旧帝国7大学(北海道大・東北大・東京大・名古屋大・京都大・大阪大・九州大)に旧官立3大学(一橋大・東京工業大・神戸大)を加えた10大学の合格力を取り上げた。
 
 今回はこの10大学に、旧官立8大学(筑波大・千葉大・新潟大・金沢大・岡山大・広島大・長崎大・熊本大)と二つの公立大学(東京都立大・大阪公立大)を加えて20大学とした。北陸、中国、九州といった、地元進学志向の強い地域の進学指標となる大学を加えることで、地域ごとの合格力バランスを考慮したものだ。
 
 この二つのランキングの順位と合格力の比較も加味しながら、傾向を読み解いていきたい。なお、上位に多く顔を見せている公立校については次回、「国公立大公立校合格力ランキング」として取り上げる。
 
 図1にあるとおり、「国公立大合格力ランキング」の上位10校は、1位灘、2位甲陽学院、3位堀川、4位久留米大学附設、5位東大寺学園、6位筑波大学附属駒場、7位大阪星光学院、8位姫路西、9位熊本、10位札幌北となった。このうち、姫路西と札幌北を除く8校は「国公立20大合格力ランキング」でも10位以内に入っている。つまり、難関・上位の国公立大への合格力が際立っているということだ。

 なお、これらランキングの合格力には、私立大合格者数は反映されていない。そのため、難関私立大の多い首都圏からはランクインしている学校が少ない。
 
 地域ごとに見てみると、近畿2府4県が17校と50位(51校)までの3分の1を占めている。特に、兵庫県の学校が目に付く。次いで多いのが中国・四国9県の9校、東海4県は7校、九州・沖縄8県が6校、北海道・東北6県と甲信越北陸6県は5校ずつなのだが、関東1都6県は東京の2校のみと極端に少ない。このあたりは、今後掲載予定の「難関私立大合格力」や「国公立大医学部合格力」と合わせて総合的に見ることで考えてみたい。

※「合格力」の算出方法については、こちらを参照