話題のリニューアル共学校の校長人事
今回は共学校を、次回は男女別学校の新校長人事についてそれぞれ取り上げていきたい。まずは話題の中堅校から見ていこう。女子校が共学化、校名も変更した学校がほとんどで、校長など現場の幹部を外部から招聘(へい)する傾向も見られる。なお、いずれの校名も中高の表記は略してある。
2023年入試最大の話題校だった芝国際(東京・港区)。校名変更後初めての入試に大量の受験生が押し寄せて、平均実倍率16倍となり、不合格者が続出した。24年入試では偏差値(四谷大塚合不合80)が軒並み50を超え、中堅校の仲間入りをしたこともあり、実倍率は前年の10分の1に急落している。
22年、東京女子学園から共学化するに際して開校準備室が設けられた。室長は学園長に就いた小野正人理事が、副室長は校長に就いた山崎達雄氏がそれぞれ担った。この二人が、リニューアル開校2年目の今年春にいずれも退任してしまった。小野氏は24年開校の開智所沢中等教育学校に校長代理として着任、山崎氏はさとえ学園小学校教頭になったようだ。
同じタイミングで多数の教員も退職したため、新年度の体制を整える必要に迫られた。結果として、高校生がまだ残る東京女子学園の顧問だった吉野明氏が、24年から芝国際の校長に就くこととなった。吉野氏は一橋大卒の社会科教員で、準難関校である鴎友学園女子の校長を長らく務め、同校の名誉校長でもある。安定感のあるその手腕への期待は大きい。
話題の2校目は、横浜創英(横浜市神奈川区)である。千代田区立麹町中学校の改革で一躍全国区の知名度となった工藤勇一氏が、定年退職後にこの学校の校長となったことから、人気が年々上昇、24年入試は驚異的な実倍率となった。25年度から実施予定の新カリキュラムを副校長の本間朋弘氏に託して退任となった。
横浜創英ともう1校、学校法人堀井学園の傘下には横浜翠陵(横浜市緑区)がある。こちらは今回、17年から校長職を担ってきた田島久美子氏に代わり、社会科教員の山本伸氏が内部昇格している。堀井学園は堀井基章理事長と、白馬インターナショナルスクール理事を務めるなど新しい教育に熱心な堀井章子副理事長の父娘が経営に当たっている。今後、傘下の両校はどのような方向を目指していくのだろうか。
同じく横浜市にある横浜富士見丘学園(旭区)は、横浜で手広く専門学校を経営する岩崎学園の傘下に入り、5年前に女子校から共学化した。このタイミングで就任した東急不動産出身の永川尚文理事長が、今回校長も兼ねることとなった。副校長には、渋谷教育学園渋谷で入試対策部長を、佐久長聖では校長を務めた柔道五段の佐藤康氏が就任する。創立から100年を経たが、志願者をいかに増やすかが課題であり、佐藤氏の生徒を集める力に期待がかかる。
東京湾岸の人気校となったかえつ有明は、創立100周年を機に千代田区富士見から江東区有明に移転、女子校から共学化して校名も変更した。前身である嘉悦女子の卒業生で、嘉悦大学学長を経て23年に就任したばかりの石川百代氏は、健康上の理由で退任することになった。後を託したのは、立教大学や東洋大学で教員を務めてきたキャリアカウンセラーの小島貴子氏である。
同じく湾岸系の人気校である芝浦工業大学附属(江東区)は柴田邦夫氏が教頭から新校長に就いた。3年で交代となった前校長の佐藤元哉氏は、板橋にあった男子校時代の芝浦工業大学高校の卒業生で、芝浦工業大学柏の英語科教員として、高校共学化や中学併設化にも携わり、21年からこちらの中学も完全共学化した。今後は共学校としてのかじ取りを柴田新校長に委ねることになる。