グローバル化が進展する中で、ビジネスパーソンにとっての英語力とは? キャリアアップに英語力は武器となるのか? パーソルキャリア(旧社名:インテリジェンス)の転職サービス「DODA」編集長である大浦征也氏に聞いた。

 今、企業が採用する人材には、どのくらいの英語力が求められているのか。大浦征也氏によれば、業種によっても違うが、TOEIC® の点数でいうと三つのゾーンに分かれるという。600点未満と、600点〜800点未満、800点以上の三つで、一般的には600点が目安になり、日常的に英語を使う仕事であれば800点以上は必要とされる。
 
 「ただしTOEIC® の点数はあくまでも目安で、実際に業務で英語を使っていたことが重要視されます。例えば製造業の営業で、代理店が海外にあり、通訳を通してでも一応英語を使って仕事をする日常があれば、そうした経験が評価されます。逆に800点以上の要件では、英語が分かるだけではなく、交渉力やプレゼン能力が求められます」

キャリアパスにも
英語力は必要

パーソルキャリア 転職メディア事業部
マーケティング企画統括部統括部長
「DODA」編集長
大浦征也氏

2002年、インテリジェンス(現社名:パーソルキャリア)入社。人材紹介事業に従事。法人営業として企業の採用支援、人事コンサルティングなどを経験した後、キャリアアドバイザーに。転職希望者のキャリアカウンセリングやサポートに長年携わる。担当領域は多岐にわたり、これまでに支援した転職希望者は1万人を超える。その後、「DODA」キャリアアドバイザーの総責任者の後、法人営業部隊も含めた地域拠点の総責任者などを歴任。17年、「DODA」編集長に就任(現職)。その他、社外にてJHR(人材サービス産業協議会)キャリアチェンジプロジェクト、ワーキングメンバーにも名を連ねる。

 かつて一部の企業で英語が“公用語”とされ、英語学習がブーム的に盛り上がった時期があった。だが最近は、その傾向も落ち着きを見せている。業務で英語力を必要とする企業は、社内での英語研修や福利厚生で学習をサポートするなど、実を重視している。

 一方、求職者側の英語に対する意識も高まり、大学時代に留学をする学生が増えているという。履歴書にTOEIC® の点数を書き込むのは当たり前で、就職や転職に有利になることはもちろん、仕事の選択肢を広げる意味でも英語力は重要になっている。

 「TOEIC® の点数が高い人の方が年収が高い、という直接的な相関があるわけではないのですが、英語力のある人は外資系やグローバル企業に勤務することも多いため、必然的に給与水準が高くなっています。また年収だけでなく、社内的なキャリアパスを考えても、英語力があることで異動する職場の選択肢が広がります。そういう意味では、英語力があることは間違いなく、今もキャリアアップや有利な転職への武器になっています」

 中堅企業でもグローバルに展開する企業が増えているため、企業の規模にかかわらず英語力が求められる機会は増えている。上司が突然外国人になるという例もある。ドメスティックな小売業やサービス業でも、インバウンドのツーリスト客に対応するために英語力が求められる。翻訳のテクノロジーが進化し、いずれ英語力は重視されなくなるという予測もあるが、今のところ英語力があることが有利なことには変わりない。