仮想通貨(暗号資産)の一種に、安定した価格の実現を目的としてつくられた「ステーブルコイン」というものがある。
ステーブルコインはその実用性の高さから、主要な銘柄では時価総額ランキングのトップ10に入るほどの需要を獲得している。
今回はそんなステーブルコインについて、仕組みに応じた分類や将来性などを解説していく。
- ステーブルコインは仮想通貨の一種で、価格の安定を目的として法定通貨などにペッグされている
- 価値を裏付ける仕組みに応じて「法定通貨担保型」「仮想通貨担保型」「アルゴリズム型」などに分類されている
- 価格のペッグは必ずしも完璧ではなく、アルゴリズム型のテラUSDでは米ドルへのペッグが外れて暴落した
- 各国でステーブルコインに対する法規制の議論が進められている
国内ではステーブルコインを取り扱う仮想通貨取引所が限られているのだが、その内の1つにコインチェックがあり、米ドルに連動したステーブルコイン「ダイ(DAI)」を売買できるようになっている。
ステーブルコインに触れてみたい方は、ぜひこの機会にコインチェックの公式サイトをチェックしてみよう。
【2024年12月最新】リップル社のステーブルコイン「RLUSD」がローンチ
ニューヨーク州金融サービス局が、リップル社の新ステーブルコイン「RLUSD」を承認する見通しが報じられていた。
RLUSDは、CircleやPaxosといった既存のステーブルコイン発行企業と競合する形となるが、トランプ政権下での規制緩和への期待が後押ししている。
リップルとは
クロスボーダー決済ネットワーク「RippleNet」を核とした事業展開で知られ、従来のSWIFTシステムに代わる効率的な送金手段を提供している。トランプ新政権の期待感からXRP価格は大幅に上昇し、2024年12月時点では時価総額ランキングで3位に付けている人気の通貨。
RLUSDは、ニューヨーク州で厳格な規制をクリアするため限定目的の信託免許を取得する予定だ。
初期の導入にあたってはBitstampやMoonPayなどの決済事業者と提携を進めており、主にクロスボーダー決済やトークン化など、企業向けユースケースに重点を置いている。
また、トランプ政権下では連邦レベルでの規制整備が進む可能性があり、RLUSDが国際金融インフラの変革に寄与することが期待されている。
2024年12月17日には正式なローンチとなっている。
ステーブルコインとは?
ステーブルコインは、法定通貨やコモディティ(商品)などの価格と連動するように設計された仮想通貨の一種である。
例えば、米ドルの価格に連動するようにつくられたステーブルコイン「テザー(USDT)」は、次のUSDT/USDチャートを見てもわかるように、1USDT=1ドルを維持している。
このようなステーブルコインは、従来の仮想通貨の価格変動が大きく、実用に不向きであったことから考案された。
次の画像は、2017年10月~2024年12月の約7年間におけるBTC/JPYとUSD/JPYのチャートを、変動幅がわかるようにパーセント表記にして重ね合わせたものだ。
これを見れば、法定通貨と比べて従来の仮想通貨は価値が不安定であることが一目瞭然で、実用性に乏しいということも理解してもらえるだろう。
それならば、法定通貨を使えばよいと考える方もおられるかもしれないが、残念ながらブロックチェーンを基盤にしているサービスは、基本的に法定通貨での決済に対応していない。
そこで生まれたのがステーブルコインであり、法定通貨などに連動して価格が安定しているため、ブロックチェーン上のサービスを含めた様々な場面で、決済手段として利用しやすくなっている。
その需要は非常に大きく、本記事更新時点(2024年12月)の仮想通貨の時価総額ランキングでは、トップ10内にテザー(USDT)、USDコイン(USDC)2種類のステーブルコインがランクイン*している。*2024年12月4日時点、CoinMarketCap調べ
ステーブルコインの仕組みと種類
ステーブルコインは、その価値を裏付ける仕組みに基づき、主に次の3種類がある。ここではそれらを確認していこう。
- 法定通貨担保型
- 仮想通貨担保型
- アルゴリズム型(無担保型)
法定通貨担保型
法定通貨担保型は、文字どおり米ドルなどの法定通貨に価値を裏付けられている。
主要な法定通貨担保型ステーブルコインは以下のとおりで、時価総額ランキングのトップ10にランクインしているステーブルコインは、いずれも法定通貨担保型となっている。
- テザー(USDT)
- USDコイン(USDC)
- バイナンスUSD(BUSD)
仕組みとしては、金を担保にして貨幣の価値を保証していた金本位制に近い。
法定通貨担保型ステーブルコインの場合は、金の代わりに法定通貨を担保にしていて、発行元が担保とするための法定通貨を一定数、保有しているのだ。
ただ、その担保資産がどれほどストックされているのかは、発行元から明確に明かされていないケースが多く、そうした不透明な部分から安全性を懸念する声もある。
また、このステーブルコインでは、対象のコインと法定通貨の価値が1:1の割合となるようにペッグされていることが多い。
仮想通貨担保型
仮想通貨担保型は、さまざまな仮想通貨が価値を裏付ける担保となっている。
- ダイ(DAI)
- sUSD(SUSD)
- RLUSD
仮想通貨は法定通貨よりも価格変動が大きいため、この種のステーブルコインは、担保の仮想通貨の価格が下落しても価値を保てるように、「過剰担保」を導入していることが多い。
例えば、仮想通貨担保型の代表格で、米ドルに連動しているステーブルコイン「ダイ(DAI)」は、分散型(非中央集権型)で発行主体が存在せず、事前に設定されたルールに従って、だれでもダイを発行できる(借りられる)ようになっているのだが、発行の際は仮想通貨を担保として預け入れる必要がある。
担保にできる仮想通貨はいくつかあるが、もしもイーサリアムを担保にするなら、担保比率は最低でも130%に設定されている。
100ドル分のダイを発行したければ、130ドル分のイーサリアムを用意しなければならないということだ。
ちなみに、ダイでは、価値を裏付けている仮想通貨の価格が下がって最低担保比率を下回ると、追加の担保の預け入れができるほか、もしも追加をおこなわなかった場合は自動的に担保が没収(強制清算という)される。
なお、2024年12月時点ではリップル社の発行するRLUSDが承認間近とされており注目を集めている。
このように、仮想通貨担保型は、価格変動リスクの大きな仮想通貨を担保としながらも、二重三重の対策を打つことで価格を維持できるように考えられている。
アルゴリズム型(無担保型)
アルゴリズム型(無担保型)は、価値を裏付ける担保資産を用意することなく発行されるステーブルコインだ。
- フラックス(FRAX)
- ニュートリノUSD(USDN)
- マジック・インターネット・マネー(MIM)
あらかじめ設定されたアルゴリズムが、市場の需給に合わせて自動的にコインの供給量がコントロールすることにより、担保がなくても価格を安定されられるようになっている。
例えば、1:1の比率で米ドルに連動するステーブルコインであれば、1枚あたりの価格が1ドルを上回ると、供給量を自動的に増やして価格を下げる。
一方で、1ドルを下回れば、バーン(焼却)などにより供給量を減らすことで、1ドルに戻そうとする。
ただ、この種のステーブルコインは、担保があるコインと比べて価格のコントロールが難しく、システムを維持できなくなったプロジェクトも多い。
システムが崩壊した代表例が、Terraform Labsが発行していたステーブルコイン「テラUSD(UST)」であり、2022年5月に米ドルとのペッグが外れて大暴落を起こした。
信用を失ったテラUSDは、以下のチャートが示すようにほぼ無価値となり、現在は上場廃止となっている。
そして、この暴落では莫大な時価総額が市場から消し飛び、他の仮想通貨の値動きにも悪影響を及ぼす事態となった。
ステーブルコインが買える日本の取引所
続いて、ステーブルコインを取り扱っている主な国内の仮想通貨取引所を紹介しよう。
- コインチェック/ダイ(DAI)
- SBI VCトレード /ジパングコイン(ZPG)
- GMOコイン /ダイ(DAI)
コインチェック/ダイ(DAI)
提供する取引の種類 | 現物取引(販売所・取引所) |
取り扱う仮想通貨 | 31種類 BTC、XRP、ETH、BCH、XEM、 LSK、LTC、ETC、XLM、MONA、 QTUM、BAT、IOST、ENJ、 SAND、DOT、PLT、FNCT、CHZ、 LINK、DAI、IMX、APE、MATIC、MKR、 AXS、WBTC、AVAX、SHIB、BRIL、BC |
その他のサービス | Coincheckつみたて Coincheck IEO Coincheck NFT Coincheckでんき Coincheckガス Coincheckアンケート 貸暗号資産サービス ステーキングサービス(β版) |
公式サイト | Coincheck公式サイト |
関連記事 | Coincheckの評判・口コミ |
コインチェックは、マネックス証券を中心とした金融グループ「マネックスグループ」傘下の仮想通貨取引所だ。
コインチェック は2018年にハッキングによる不正流出の被害に遭ったことがあるのだが、それを契機にマネックスグループに買収された。
マネックスグループの子会社となったあとは、グループが持つ高度な技術を用いて、強固なセキュリティ体制を構築し、安全な取引環境をユーザーに提供している。
また、シンプルで扱いやすい取引アプリが人気で、2019年から2023年にかけてダウンロード数No.1*を獲得している。※ 対象:国内の暗号資産取引アプリ、データ協力:AppTweak
取り扱う仮想通貨は31種類で、ステーブルコインはDAIを扱っている。
2024年2月にはステーブルコインUSDCを発行する米Circle社との提携をしており、USDCの国内初上場が期待されている取引所だ。
SBI VCトレード /ジパングコイン(ZPG)
提供する取引の種類 | 現物取引(販売所・取引所) レバレッジ取引(販売所) |
取り扱う仮想通貨 | 24種類 BTC、ETH、XRP、LTC、 BCH、DOT、LINK、ADA、 DOGE、XLM、XTZ、SOL、 AVAX、MATIC、FLR、OAS、 XDC、SHIB、DAI、ATOM APT、HBAR、ZPG、NEAR |
最小取引数量 (ZPGの場合) |
現物取引(販売所):0.01ZPG |
取引手数料 (ZPGの場合) |
販売所:無料※スプレッドあり |
仮想通貨の送金手数料 (Z`Gの場合) |
無料 |
その他のサービス | 貸暗号資産 ステーキング |
公式サイト | SBI VCトレード公式サイト |
関連記事 | SBI VCトレードの評判・口コミ |
SBI VCトレードも仮想通貨担保型のステーブルコイン「ZPG(ジパングコイン)」を取り扱っている。
SBI VCトレード出金手数料も無料となっており、余計なコストをかけずにZPGの出金ができる。
また、SBI VCトレードは先述したコインチェックと同様に、2023年11月にステーブルコインUSDCを発行する米Circle社との提携をしている。
時価総額の高いステーブルコインUSDCの上場に期待が高まっている取引所の一つだ。
GMOコイン /ダイ(DAI)
提供する取引の種類 | 現物取引(販売所・取引所) レバレッジ取引(販売所・取引所) |
取り扱う仮想通貨 | 26種類 BTC、ETH、BCH、LTC、XRP、 XEM、XLM、BAT、OMG、XTZ、 QTUM、ENJ、DOT、ATOM、XYM、 MONA、ADA、MKR、DAI、LINK、 FCR、DOGE、SOL、ASTR |
最小取引数量 (ダイの場合) |
現物取引(販売所):1DAI 現物取引(取引所):1DAI レバレッジ取引(販売所):取り扱いなし レバレッジ取引(取引所):取り扱いなし |
取引手数料 (ダイの場合) |
現物取引(販売所):無料、スプレッドあり 現物取引(取引所):Maker -0.01%、Taker 0.05% レバレッジ取引(販売所):取り扱いなし レバレッジ取引(取引所):取り扱いなし |
仮想通貨の送金手数料 | 無料 |
その他のサービス | つみたて暗号資産 貸暗号資産 ステーキング IEO API |
公式サイト | GMOコイン公式サイト |
関連記事 | GMOコインの評判・口コミ |
GMOコインは、先ほど紹介した仮想通貨担保型のステーブルコイン「ダイ(DAI)」を取り扱っている。
現物取引の取引形式は、GMOコインとユーザーの間で取引をする「販売所」と、GMOコインのユーザー同士で取引できる「取引所」があり、その両方でダイの売買が可能だ。
仮想通貨取引以外のサービスも充実しており、レンディングサービスでは、保有しているダイを貸し付けて利息で稼ぐこともできる。
ステーブルコインであるダイは投資対象としてではなく、実用目的で購入されるケースが多いと思われるが、GMOコインでは、ダイをはじめとしてすべての仮想通貨を出金する際に手数料がかからない、ユーザーにとっては非常にありがたい手数料体系となっている。
ステーブルコインの将来性
最後に、ステーブルコインの将来性に関わる重要なポイントを3つ紹介しておく。
- マルチチェーンへの対応が進められている
- 日本では電子決済手段として位置付けられている
- 一部のステーブルコインは淘汰される可能性がある
マルチチェーンへの対応が進められている
これまで仮想通貨やブロックチェーンは、ブロックチェーンごとで独立していて、互換性がないものが多かった。けれど、昨今では相互運用性(インターオペラビリティ)を実現しようとする動きが活発になってきており、それはステーブルコインにおいても例外ではない。
例えば、法定通貨担保型ステーブルコインの1つ「USDコイン(USDC)」では、2022年9月末に発行元のCircle社から、現状の基盤であるイーサリアムチェーンだけでなく、他に5つのブロックチェーンでも利用できる移送用プロダクトのリリース計画が発表された。
マルチチェーンへの対応によって利便性が向上すれば、自ずとステーブルコインの需要もさらに拡大していくことだろう。
日本では電子決済手段として位置付けられている
先ほど紹介した、2022年5月のテラUSDの暴落騒動は、ステーブルコインが抱えるリスクを顕在化し、各国政府でステーブルコインに対する法規制の必要性が議論される契機となった。
各国で今後、何らかの規制がステーブルコインにかけられれば、市場の在り方も大きく変化する可能性があるので、その動向には注意しておくべきだろう。
ちなみに、日本では他国に先んじる形で、2022年6月にステーブルコインへの規制を含む改正資金決済法が成立した。
細かな解説は割愛するが、この法改正の重要なポイントとして、法定通貨担保型で、なおかつ法定通貨に連動するステーブルコインは、発行できる者が「銀行・資金移動業者・信託会社」に限定され、取引の仲介は「電子決済手段等取引業者」でなければできないこととなった。
しかし、2023年6月1日施行の改正資金決済法において一定のステーブルコインは電子決済手段として位置付けられ、発行および流通が可能となっている。
現在、時価総額ランキングでトップ10入りをしているステーブルコインUSDCを発行する米Circle社は、国内取引所コインチェック、SBI VCトレードとの提携をしており、国内での流通を目指している。
一部のステーブルコインは淘汰される可能性がある
仮想通貨のデータアグリゲーター(データを収集・整理し、そのデータを配信する業者もしくはサービス)であるCoinMarketCapによると、本記事更新時点(2024年12月)で、ステーブルコインの種類は140種を超えている。
通常の仮想通貨であれば、マイナーであっても、将来の値上がりに期待して投資資金が集まることがあるが、ステーブルコインは価格の安定を目的としてつくられているため、わざわざマイナーなものを購入するメリットは薄い。
また、2022年5月に起きたテラUSDの暴落騒動は、無担保型ステーブルコインの不安定性を露見することとなり、多くの投資家に価格を安定させる仕組みの重要性を再認識させた。
今後さらに、各国で法規制が実施されれば、それに対応できないものも出てくるはずだ。
これらの要因から、数多く存在するステーブルコインの内、システムが脆弱なものや環境の変化に順応できないもの、需要を獲得できないものは、自然淘汰されていくと見られている。
ステーブルコインに関してよくある質問
- ステーブルコインのランキングを教えてください
-
CoinMarketCapによると、ステーブルコインの上位5位のランキングは、USDT・USDC・DAI・FDUSD・USDDとなっている。
なお、CoinMarketCapにリストされているステーブルコインの数は2024年2月時点で約180にものぼる。
- ステーブルコインと暗号資産(仮想通貨)の違いを教えてください
-
勘違いされることが多いが、ステーブルコインも暗号資産の種類の一つである。
ステーブルコインは、法定通貨やコモディティ(商品)などの価格と連動するように設計された仮想通貨だ。
そのため、ステーブルコインとそれ以外の仮想通貨を比べたときに、ボラティリティ(価格の変動)が低いという特徴などがある。
ステーブルコインのまとめ
今回はステーブルコインについて、その仕組みに応じた種類や将来性などを紹介した。
- ステーブルコインは、法定通貨などの価格と連動するように設計された仮想通貨の一種
- 価値を裏付ける仕組みで分類され、「法定通貨担保型」「仮想通貨担保型」「アルゴリズム型」などがある
- アルゴリズム型であるテラUSDは、2022年5月に米ドルとの連動が外れて暴落した
- マルチチェーン対応などで普及が進む一方、今後の各国での法規制が普及の妨げになる可能性もある
ステーブルコインは、従来の仮想通貨と違って価格が安定していることから、ブロックチェーンを基盤にしたサービスを提供する上で欠かせないものになりつつある。
一方でステーブルコインを取り扱う仮想通貨取引所は、コインチェックなどのごく一部に限られている。
もっとも、コインチェックなら、500円という少額からステーブルコインのDAIを購入することができる。
また、コインチェックはステーブルコインUSDCを発行する米Circle社と提携しており、USDCの上場が期待されている取引所だ。
興味がある方は、この機会にコインチェックの公式サイトを覗いてみてはいかがだろうか。