【1】スマホを持たせなかったこと
息子が中学受験に合格した一番の環境的要因は、‶スマホを持たせなかったこと″だと思います。
子どもにスマホ使用時間のコントロールは難しい
スマホでSNSやオンラインゲームばかりして、大切な勉強時間や睡眠時間が奪われることは、小学校教師としての経験で痛いほどわかっていました。もちろん一概に言えることではありませんが、スマホを子どもに持たせると、これまでの時間の過ごし方が一変します。
私も実際、中学受験に合格したご褒美として、息子にスマホを渡して実感しました。親が設定した規制や約束事を巧妙にくぐり抜けて、悪い事ばかりにスマホを使うようになりました。スマホを渡して3日後には没収しました。
子どもが、スマホを欲しがる理由として、「勉強で調べられるから」「家族とすぐ連絡が取れるから」「留守番しているとき、困ったことがあったらLINEで聞けるから」 などと、よいことばかりを言います。息子も同じようなことを言っていました。
でも、息子はスマホを勉強に使うことはほとんどありませんでした。家族に連絡することもほとんどありません。SNSとオンラインゲームをするだけでした……。勉強の時間が減り、家族とのコミュニケーションの時間が減りました。そして、息子を叱ることが10倍以上に増えました。
大人でもスマホをつい触ってしまうものです。子どもならなおさら、スマホ使用時間のコントロールは難しいのです。もし、受験勉強の期間にスマホを持っていたら、確実に勉強時間は大きく削られていたと思います。
スマホを持っていると「受験勉強=スマホは我慢」に
息子が6年生のとき、学級でスマホを持っていないのは息子だけでした。それほどスマホは多くの子どもが持っていて、スマホを持つ時期も低年齢化しています。息子も「スマホが欲しい。クラスで持っていないのは自分だけ」と懇願していました。でも、スマホ絡みのトラブルやマイナス面を小学校教師としてたくさん知っていたので、私と妻は頑なに拒み続けました。
そして息子に対して、「受験に合格したら、スマホを持たせてあげる」と話しました。すると、それが私の予想以上に、息子の受験勉強のモチベーションアップにつながりました。「スマホデビューのために何が何でも頑張ろう!」と息子のやる気を大きくし、継続することにも役立ちました。
もし息子がもともとスマホを持っていたら、受験勉強期間は勉強に集中させるため、スマホを預かっていたと思います。それだと、「受験勉強=スマホは我慢」になってしまい、つらい日々が続いていたかと思います。スマホを持っていなかった息子にとって、「受験勉強=スマホゲット」と希望と意欲・集中につなげられたのだと思います。
もし、この記事をお読みの親御さんで、お子さんの受験を考えられていて、スマホをまだ持たせていない方は、ぜひスマホをお子さんに渡すタイミングをもう少し考えていただきたいです。
【2】自分の部屋がなかったこと
息子が中学受験に合格した2つ目の環境的要因は、‶自分の部屋がなかったこと″です。
自分の部屋がない息子は、リビングで勉強していました。小学生で注意力が散漫なので、勉強していてもすぐに手遊びを始めてしまいます。そんなとき、リビングにいる私や妻がすぐに声をかけて、勉強を再開させることができました(私も自分の部屋がなく、リビングで仕事をしています)。
また、受験勉強をしていてわからないところがあれば、すぐに親に聞いたり、親が気づいて声をかけたりすることもできました。もし息子に自分の部屋があって、自分の部屋で受験勉強をしていたら、勉強以外のことで長い時間が過ぎてしまっていたと思います。勉強の内容がわからず、他のことに意識が行ってしまっていたと思います。
受験勉強のスタートが遅く、短期決戦の息子にとっては、自分の部屋がないことはかえって良かったことだと思います。
もし、この記事をお読みの方で、お子さんが自分の部屋で受験勉強をされているようでしたら、一度、リビングで勉強させてみることをおすすめします。お子さんの集中力や、勉強のつまずきを知る機会につながるかと思います。
【3】自習室や喫茶店での勉強
息子が中学受験に合格した3つ目の環境的要因は、自宅以外の‶塾の自習室や喫茶店での勉強″をたくさんさせたことです。
知り合いがいない環境での勉強
塾選びのときに、受験対策をしている塾の中でも、少しだけ遠くの塾に通うことにしました。家から一番近くの塾だと、息子の通う同じ小学校の友達がたくさんいて、集中できないと思ったからです。おしゃべりやおふざけが大好きな息子は、知っている学校の友達がいると受験勉強をしないと考えました。
受験対策をしている塾には、たいてい自習室があります。塾の先生が授業をしない時間は、自習のために教室を開放してくれるのです。この自習タイムのときに、知り合いがいない息子は、誰ともしゃべることができません。知らない人しかいない部屋の中で、手遊びをするのも恥ずかしいものです。だから人一倍、集中して勉強することができたようです。
また、休日で習い事のソフトボールがなく、自習室も開いていない日は、家ではなく近くの喫茶店で受験勉強をさせました。家にはテレビもあるし、おしゃべり相手になる家族もいます。ちょっかいを出して遊ぶことができる保育園に通う娘もいます。スマホは持っていませんが、家にはおもちゃや漫画本などもあります。
そこで、家の近くにあるコメダ珈琲店やミスタードーナツ、スターバックスコーヒーで受験勉強をさせました。私も一緒に行って、学校の仕事をしました。テレビや遊び道具、おもちゃも漫画もない息子は、勉強しかやることがありません。
静かな店内では、しゃべることも遠慮がちです。ただひたすら勉強しました。朝8時ごろから12時ごろまで勉強し、いったん家に帰って昼ご飯を食べて、また喫茶店に勉強しに行きました。そして夕方の5時ぐらいまで勉強しました。
夏休みのお盆シーズンや受験直前の年末年始は、妻の実家に帰省します。このときも、車で喫茶店に行って受験勉強を続けました(私も店内で一緒に仕事をしていました)。
子どもが集中できる環境を見つけよう
この受験勉強のために通った喫茶店を、息子と私は「精神と時の部屋」と呼んでいました。「精神と時の部屋」は、人気アニメ『ドラゴンボール』に出てきます。修行をして強くなるための部屋です。部屋に入った人以外は誰もいなくて、何もなくて、ただ広い部屋です。修行にうってつけの部屋です。
その部屋で修行をして外に出ると、何倍も強くなることができます。喫茶店で集中して勉強した後、喫茶店から出る息子は、孫悟空や孫悟飯と同じような感覚になったのだと思います。実際、ものすごく集中して勉強することができていました。
家で勉強させていると、「ちゃんと勉強しぃ!」「早く勉強しぃ!」「集中しぃ!」と親の小言が多くなってしまい、イライラしていました。それが喫茶店に行って勉強させると、親の注意が激減しました。息子にとっても親にとっても良かったのです。
もし、家での勉強だとお子さんの集中が続かないようでしたら、塾の自習室や、家以外の喫茶店などで勉強させてみることをおすすめします(もし喫茶店で勉強させる場合は、親御さんの同伴をお願いします。お子さんの安全のために)。
今回は、受験勉強の環境としてスマホを持たせないことや、子ども部屋でなくリビングで勉強させたり、自習室・喫茶店で勉強したりすることを紹介させていただきました。お子さんの受験勉強の参考になればうれしいです。(続く)