偏差値55以上の中学校の志願者は減少?
森上教育研究所の森上展安所長が登壇し、まず前回の入試を振り返る。2025年度の入試は高い受験率が維持された。偏差値45以下の中学校の倍率は1倍台だが、他はほぼ2倍台後半以上と厳しい入試だった。
それでは、次回はどうなるのだろうか。2025年7月の首都圏模試を調査・分析すると、2026年度入試の志願者動向のボリュームゾーンは横ばいながら、偏差値55以上の難関校および準難関校の志願者は前年比で数パーセントだが下がっている。理由としては難関校の問題が難しくなっているため、それを避ける傾向があるだろう。
その中で人気が上がっているのは、東京大学の合格実績が2桁に達した学校だ。広尾学園中学校、都市大付属中学校、城北中学校などがそれだ。また、医学系も人気。その影響で獨協中学校はこの数年人気がある。国際系では広尾学園中学校や広尾学園小石川中学校の人気が続く。
埼玉の栄東や千葉の東邦大東邦は良問を出題
埼玉の1月入試では栄東中学校の入試問題が良問なので、2月に向けて受験をする人にはお勧めだ。2024年度入試で人気だった開智所沢中学校は、7月の模試データを見る限り、2026年度入試でも人気は相変わらず。
埼玉の注目は立教新座中学校。付属校は理系が少ない傾向にあるが、立教新座はここ最近、理系進学が3割と増えている。
千葉の1月入試では、東邦大東邦中学校が、入試問題に良問が並ぶから受験するのはお勧めだ。埼玉の1月受験との違いは、千葉の学校は第一志望にする受験生も多いことだ。渋谷学園幕張中学校は押しも押されもせぬ共学の最難関校であるし、東邦大東邦中学校は医学部進学に強い名門校だ。市川中学校も東京大学に30名を出せる学校になった。
2月1日が日曜日、サンデーショックでどうなる
注目は女子だ。2月1日が日曜日のため、プロテスタント校が入試日をずらすからだ。フェリス女学院中学校は2月1日から変更はないが、女子学院中学校や立教女学院中学校、東洋英和中学部、横浜共立学園中学校は2月1日から2月2日に変更。
これまでのサンデーショックの場合、2月1日に桜蔭中学校、2月2日に女子学院中学校という併願をする受験生が多かった。しかし、御三家以外の学校も人気が上がってきたので、今後は違ってくるだろう。
今や御三家に並ぶ難易度である洗足中学校は2月5日の第3回入試を廃止し、2月1日の定員を増やした。サンデーショックの影響で2月1日の志望者は増えると予想される。2月1日は洗足中学校、2月2日に女子学院中学校という併願パターンが出てきそうだ。
また、サンデーショックの新しい流れは、共学校との併願だろう。女子学院中学校の併願校として早稲田実業学校中等部、渋谷学園渋谷中学校が選ばれ、こういった学校も女子の人気が上がりそうだ。
2月2日に女子学院中学校の受験があるため、2月2日の洗足中学校の第2回入試と豊島岡女子中学校はやや下がると予想される。また、立教女学院中学校が2月2日に異動するため、同じ立教の系列校である香蘭女学校中等科との併願が可能だ。香蘭女学校は立教への内部進学率が上がったことから、中学入試の難易度も上がっている。
2月3日は筑波大学附属中学校の人気も上がっている。都立一貫校の人気がやや落ち着いてきたことが原因だろうか。
最後に、勝ち方も大切だが負け方も大切。次につながることを考えたい。中学受験が残念な結果になったら、大学受験で希望がかなうようにしよう。偏差値が10違っても大学合格実績が同じ場合もあるから、併願校はしっかり選んでほしい。
緻密な受験計画が成功のカギ
次にTOMASの講師たちが登壇し、「秋からの志望校対策と併願戦略」を話した。
まずは優先順位を明確にすること。現在は6校、7校を受験するケースも多いが、すべての志望順位を決めておくこと。第三志望ぐらいまではキチンと決めても、それ以下の志望校になると「この学校とこの学校ならどちらでもいいや」となってしまうこともあるが、それは避けたほうがいい。すべての学校に志望の優先順位を付けたい。
次に必要なのはメリハリを付けることだ。難易度が同じぐらいの学校をいくつも受験せず、難易度が高い学校、難易度が比較的緩やかな学校と差を付けていくのがいいだろう。
このメリハリにも関連するが、3番目に意識したいのは、勢いや流れを想像するということだ。受験生はまだ小学生。当日の体調やメンタルによって得点が大きく変わり、合否にも影響が出る。そのため、早めに合格を勝ち取ることが大切だ。
ここで1月受験のメリット・デメリットが出てくる。受験に慣れるということではメリットがある。1月に合格すれば自信につながる。しかしうまくいかないと、不安な気持ちで2月を迎えることになる。そのため、2月2日までに1校は合格を決めたい。確実に合格できそうな学校を組み込むことも必要だ。
このように「2月2日までに合格できる」ようにしても、調子を崩し、合格が勝ち取れない場合もあるだろう。その「最悪なパターン」を想定するのも必要だ。
そのために2月3日は複数を出願する。例えば、3日にチャレンジ校で慶應義塾中等部を出願しておいて、もう1つ、「まず合格できる安全校」も出願しておく。2月2日までに順調に合格を取っていれば、3日はチャレンジ校、合格が取れていない場合は安全校を受験する。
こういった受験の計画は、緻密に立てていく必要があるだろう。
過去問演習は徹底的に行う
そして、小学6年生は秋以降どうやって過ごすべきか。まず11月末までに志望校を選び、スケジュールを決める。そして、第一志望の過去問は10年分はやっておきたい。第二志望や第三志望も5年分はやっておきたい。
中学受験の特徴は、学校によって出題傾向がまったく違うということだ。そのため、第一志望の入試問題の対策をしっかりやることが重要になる。入試は「偏差値がいくつだから合格」ではなく、当日、合格最低点より高い点数を取れば受かるのだから。
集団塾の場合、自分が志望しない学校の問題を解く場合もあり、それは小学6年の秋以降では効率がよくない学習となる。個別指導塾の場合、自分の志望する学校に特化した指導が受けられるのがメリットだ。
もう1つ、理科や社会を秋の最初から仕上げていくことが必要だ。いろいろなテキストに手を出さず、1冊に絞って何周も繰り返して学習することが効率的である。
イベントの最後には保護者からの質問に答えるコーナーがあり、「1月に学校を休ませるか」という受験生の保護者にとって最大のテーマを取り上げた。学校に行くメリットとしては、体を動かす、規則正しい生活を送れる、友達と会えてリフレッシュできることが挙げられるが、コロナやインフルエンザへの感染リスクなどのデメリットもある。仮に休むことを選択する場合、「ちゃんとスケジュールを組んで勉強することが必要だ」という回答があった。