どうして浪人はつらいと感じるのか?
まずは浪人をつらいと感じる主な要因を考えてみたいと思います。
①「嫌々」浪人生活を送っている
現役時代の受験でひとつも合格が取れなかった人や、体調不良などの理由で受験自体ができなかった人は、他に選択肢がないからという理由で否応なしに浪人が決まってしまいます。この場合、「嫌々」浪人生活がスタートすることになるため、モチベーションが上がりづらい傾向があります。
一方、滑り止めなどの合格はあったけれど、自らの意志で能動的に浪人を選択した人は「自分で浪人を選んだ」という意思決定があるため、前向きにスタートを切れる傾向があります。
また、浪人することになった経緯はどうあれ「とにかく勉強が嫌だ、浪人が嫌だ」というように、ネガティブな精神状態を切り替えられない人も少なくありません。この気持ちのまま毎日勉強していても、つらさが募っていく一方です。
浪人生の苦しい気持ちは、理解も共感もできるのですが、浪人生活に対する心構えが受動的なものなのか能動的なものなのかは、大きなパフォーマンスの差となって表れるため注意が必要です。
②日々の自由度が高すぎて生活リズムが乱れる
浪人生は学校があるわけではありませんので、起床時間や活動時間を他者から規定されることがなくなります。基本的には1日24時間の采配をすべて自分が決めてよい、決めなければならない立場に置かれるのです。
うまくマネジメントできれば、高校時代よりもたくさん勉強ができる充実した日々にすることができますが、逆に自由度が高いゆえに、生活リズムの乱れにつながるリスクもはらんでいます。多い例としては夜ふかしのせいで起床時間が徐々に遅くなり、気づいたら昼夜逆転の生活になってしまうケースです。これは浪人生が一番注意しなければならないことかもしれません。
生活リズムが乱れると、自己嫌悪に陥りやすくなります。勉強もはかどらなくなり、成績も一向に上がりません。そんな自分にまた嫌悪や怒りや諦めを感じ、勉強する気力を失ってしまいます。
こういった負のスパイラルに陥ると、浪人生活の継続が困難になり、受験自体ができなくなってしまう人もいます。つらい状態を自分で作り出さないために、生活リズムを健全に保つことはとても大切です。
③毎日勉強ばかりで閉塞感がある
これは真面目に頑張っている人でも陥りやすい現象です。大抵は疲れがある程度たまってきたときなどですが、ふとした瞬間に勉強ばかりの日々に息苦しさを感じてつらくなることがあります。
後述しますが、息抜きがしっかりと定期的にできているかどうかがポイントです。浪人生として1年間勉強に取り組まなければならない事実は変わりませんが、決してそれ一色の日々にしなければならないわけではありません。閉塞感でつらくならないように、自分で自分の生活をコントロールしていくことが大切です。
④成績の伸びを感じづらい
現役生と浪人生の成績の伸びしろを比較すると、一度受験勉強を頑張った浪人生に残されている伸びしろのほうが、一般的には小さくなると考えられます。それはつまり、勉強をしてぐんぐん成績が伸びるというような、自己成長を自分自身が感じづらい状況になるということです。
人は努力したことに対して目に見える結果が出ればモチベーションが上がりますが、頑張っていてもなかなか成果を感じられないとなれば、やはり気分は落ち込んでいくものです。
浪人生活を送るにあたっては、まずそういった事実を頭で理解しておくことが大切です。そしてこれも後述しますが、日常的に自分の成長を感じられるような工夫を取り入れて、自分で自分のモチベーションを高めていくことが重要です。
⑤現役生に成績を追い抜かれる恐怖がある
上記の伸びしろの話と関連して、さらに浪人生の不安をあおるのが現役生の存在です。浪人生活が始まったばかりの春頃は、模試の成績などを見ても浪人生の成績は悪くありません。春時点の現役生はまだそこまで勉強ができておらず、模試では全体的に浪人生が有利です。
しかし、夏、秋、冬と時間がたつにつれて、徐々に浪人生の偏差値は伸びが鈍化したり、下がったりする可能性が高いのです。それはご想像の通り、現役生が徐々に受験勉強を本格化して追い上げてくる現実があるからです。
前述のようにただでさえ自己成長を感じづらい浪人生にとって、現役生の追い上げによって、模試の偏差値という目に見える数値でも成果を感じづらくなることはつらいことです。しかしそれでも、自分の努力量を信じて前を向いて進み続ける精神力が必要になります。
⑥同級生と自分を比較してしまう
浪人生の同級生には、現役合格を経てすでに大学生になっている人が多くいます。楽しい大学生活を送っている友人たちと、浪人生として勉強し続けなければならない自分を比較すれば、つらい気持ちを抱く可能性が高いことは想像に難くありません。
特に昨今はSNSの普及で、友人たちの動向がいつでもチェックできてしまう時代です。現代人の多くには、自分と他人を比べてしまう習慣が染みついています。浪人生にとってこの比較は、基本的にマイナスにしか働きません。SNSのアカウントを削除するなど、自衛のための工夫を必ず検討しましょう。
また、自分と同じように浪人をしている同級生との比較も、あまりしないほうがいいでしょう。もちろん中には競争心が強く、他の浪人生と自分の成績を比べることが勉強のモチベーションになる人もいるかと思います。自分がそういうタイプならOKです。
一方で周りと自分を比べて劣等感を抱きやすい人や、周囲のいろいろな情報に左右されてしまうような人は、同じ浪人生同士だからといって頻繁にコミュニケーションをとったり、比較したりすることが得策にはなりません。
これまでの人生を振り返り、集団生活や他者との競争において、どのような選択をして、どのような結果を招いたのかを総括してみると、自分に適した環境が見えてくるかもしれません。
⑦周りからのプレッシャーを感じる
塾講師の仕事をしていると、「浪人したら成績は必ず上がる、志望校に合格する」と思い込んでいる人に頻繁に出会います。受験生本人よりも保護者のほうが、そう思っている人は多いかもしれません。しかしそんなことはありません。
ここまで読んでいただいただけでも、浪人生活にはさまざまなつらさやリスクがあることがおわかりいただけたかと思います。それらをしっかり克服しながら成績を確実に伸ばし、志望校の合格をつかみ取るという1年間の大事業が浪人です。これはとても大変なことで、中には受験までたどり着けなくなる人も出てきます。
そんな状況で浪人生はさまざまなプレッシャーを感じています。家族、友人、高校の先生などの周りの人たちが、自分の浪人に関して期待したり、気にかけたり、叱咤激励してきたりするわけです。周囲の人も、もちろん追い詰めるつもりで接しているわけではないでしょう。しかし浪人生本人からすれば、「次は失敗できない……」というプレッシャーを蓄積することにもなり得るのです。
そういったつらさと、浪人生が日々向き合っていることを周囲の人には認識していただきたいと思います。また浪人生たちは、周囲から受け取るメッセージにフィルターをかけられるようになりましょう。自分のエネルギーになる言葉は受け取り、邪魔になるような言葉は受け流していきましょう。
ただし、自分の行動が周囲に不安を与えているケースは別です。勉強をせずに遊んでばかりいる浪人生が、親から「勉強しなさい」と言われてしまうのは当たり前です。周りから応援してもらえるような生活を送ることを、なるべく心がけて実践していきましょう。
⑧また受験に失敗するかもしれないという不安に襲われる
人間は嫌な体験をなかなか忘れることはできません。浪人生の多くは現役時代に不合格を経験していますが、その体験が頭にこびりついてしまっている人は少なくありません。合格発表の場面や、そのときの家族の表情などを夢に見るという生徒も過去にはいました。
特に秋以降、受験が徐々に近づいてきた現実を感じ取り、メンタルに不調を来す浪人生は多いものです。赤本の点数がなかなか上がらないことで志望校までの距離を感じるなど、きっかけはいろいろありますが、「また落ちたらどうしようと考えて、眠れなくなります」という相談は、私も浪人生から毎年受けています。
失敗体験のイメージにとらわれて、パフォーマンスが下がれば成績も下がり、さらにネガティブな気持ちになるという悪循環が生まれるリスクもあります。
そういったとき、私は「浪人生活の軌跡」にフォーカスするよう言葉をかけます。これまでどれだけ頑張ってきたか、昨年の高3時と比べてどのような点で成長できたか、そういったポジティブな部分に目を向け、「昨年と今年の自分は違う」という認識を新たに持ってもらうよう心掛けています。不安に襲われたときはぜひ試してみてください。
浪人のタイプごとに違う「しんどさ」
次に浪人生のタイプ別に、つらさの要素をまとめてみたいと思います。自分が置かれている環境によって、特徴的なつらさが生まれてしまうこともあります。
予備校に通う浪人生が感じるつらさ
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予備校(特に校舎で集団授業を実施するタイプ)に通う浪人生が、潜在的に抱えているリスクやつらさには下記が挙げられます。
ⅰ)朝から勉強ができない
校舎で受講するタイプの予備校の場合、その校舎が何時にオープンするのかは浪人生にとってかなり重要な要素です。前述の通り浪人生の大敵は生活リズムの乱れです。毎朝同じ時間にしっかりと起床し、同じ時間から勉強を開始できることが理想です。
しかし昨今は浪人生の減少に伴い、塾・予備校の校舎が午後まで開かないところも増えています。それではせっかくやる気があっても、学習環境が整っていないというつらい状況に置かれてしまいます。
ⅱ)他者との比較
集団で受講するとなれば、同じ教室に自分と同じ浪人生の存在を否応なしに感じることになります。前述の通り、自分と他者を比較してあれこれ不安になってしまう人は、ここでつらさを感じるリスクが高まると言えます。
ⅲ)復習・自習の自己管理
さまざまな塾・予備校の形式があるので一概には言えませんが、いわゆる授業がメインのスタイルの場合は、習ったことをいつ、どのように、どれぐらい復習すればよいのかは自分で決めて実行しなければなりません。これは勉強があまり得意ではない人にとって、実はとてもつらい状況です。
浪人生には自分で学習する時間が高校生と比べて多くありますが、その長い時間における学習の質がよいか悪いかは、1年後に大きな差となって表れます。復習や自習に関して、その塾や予備校にどのようなサポートがあるのかは確認しておいたほうが無難です。これが苦手な人は管理型の塾などが候補になるかと思います。
ⅳ)誘惑が多い
家と予備校の往復が、予備校に通う浪人生にとっての生活の基本導線となりますが、そこには誘惑が多く存在します。例えば、通塾経路内にある娯楽施設に立ち寄って遊びたくなるなども誘惑のひとつでしょう。特に大手予備校などは人が集まる大きな駅に立地していますが、そういった駅周辺にはさまざまな店舗・施設があり、ついつい立ち寄って長居してしまうことがあります。
また校舎型の予備校のメリットとして自習室を利用できる点がありますが、こちらも注意が必要です。友人と一緒に少しだけ休憩するつもりが、自習室から出て会話を楽しむ中で、うっかり勉強から長時間離れてしまうことなどがあります。メリットだったはずの自習室の存在が、デメリットにもなり得るというわけです。
いずれにしても誘惑を跳ねのけて勉強に集中するためには、強い自制心が必要となります。
自宅浪人ならではの大変さ
自宅浪人(オンライン塾などに所属している浪人生も含む)をしている人が、潜在的に抱えているリスクやつらさには下記が挙げられます。
ⅰ)閉塞感がある
まず想像しやすいつらさとして、自宅に缶詰め状態になることによる息の詰まり、閉塞感が挙げられます。校舎のある予備校に行けば、その行き帰りや予備校の中で自然に他人と接するような機会が生まれるでしょう。しかしずっと自宅にいる場合は、家族以外の人と話す機会がなくなってしまい、人によっては気分が落ち込んだり、つらくなる人もいます。
この場合は戦略的な息抜きが必須になります。
ⅱ)すぐに疑問が解消できない
これはどんな塾・予備校に通うかにもよりますが、もし自宅でオンライン塾にも所属せず一人で浪人をしている場合、勉強の最中に出てきた疑問点の解消が難しくなるリスクがあります。どのような科目であれ不明点は必ず生じます。そしてそれを解消することで成績が向上します。わからないことがわかるようになることが勉強の本質であり、その蓄積がすべてです。
疑問や不明点が出てきたら、なるべく速やかに塾講師やチューターに質問をして解決することが理想ですが、自宅浪人の場合はそれができず、つらくなってしまうことがあります。例えば質問対応のサポート体制がきちんと整っているオンライン塾に所属するなど、自宅で学習するにしても環境設定の工夫をすべきです。
ⅲ)健康の維持
自宅浪人を選ぶと1日あたりの運動量はかなり減ってしまいます。高校時代には考えられなかったような体調の変化が表れる人も少なくありません。例えば腰痛が出てきたり、風邪をひきやすくなったり、運動不足が肥満につながることもあります。人によっては思わぬつらさを被ることがあるのです。
やはりまずは規則正しい生活を送ることが前提として重要になり、できれば毎日外に出てランニングやウォーキングなどの運動習慣を持つことをお勧めします。勉強時の姿勢などにも留意していきましょう。
医学部を目指す浪人生の苦しさ
浪人と聞いたときに、医学部志望の浪人生を思い浮かべる人も多いかと思います。入試問題が難しく、定員も多くはない医学部入試では、どうしても合格がもらえずに浪人となる受験生が発生しがちです。
医学部を目指す浪人生特有のつらさとしては、まず入試の難易度の高さが挙げられます。頑張って努力していても正解になかなかたどり着けないような攻略難度の高い問題に取り組む中で、学力的に高い壁を感じ、モチベーションが低下してしまうシーンは、文系科目などと比較すると多いと言えます。また必要な科目数が多く、ミスが許されない傾向もあります。
難問ばかり演習していても基礎が抜けていれば合格はできないため、長い浪人生活の中で客観的に自分の状態を分析して勉強法を選択するなど、適切な対策を打つ力も必要になります。
そして、やはり医学部ならではのつらさといえば、「多浪」と呼ばれる複数年浪人を繰り返す状態に陥ることです。一般就職ではなく、医師を目指すためには医学部に合格するほかありません。しかし医学部合格を目指す浪人が2年、3年と続けば、それだけ孤独な時間が延びるだけでなく、1年ごとに不合格という結果に自信を失い、精神的に追い詰められてしまうケースも多くあります。
浪人生活がつらくなったときの対処法・リフレッシュする方法
①環境設定に細心の注意を払う
ここまで浪人生活におけるさまざまなリスクやつらさを説明してきましたが、その中で「環境設定」という言葉が複数回出てきたかと思います。浪人の1年間において予想される、さまざまなトラブルやつらさを事前に綿密にシミュレーションし、それを回避・解消できるような環境設定をすることが何より大切です。
例えば、規則正しい生活を維持するために、どのような工夫ができるか。他者と自分を比較してモチベーションが下がらないようにするためにはどうすればよいか。塾・予備校を対面にするのかもオンラインにするのかも、各浪人生の性格によって変わるでしょう。
私は「浪人生活は自己分析から始まる」とよく生徒に伝えています。どんなリスクがあるか、その克服のためにはどのような要素が必要なのかは、一人ひとり大きく異なります。まずは自分のことを客観的によく分析し、自分に必要になると予想される要素をピックアップし、そのうえで塾選びなどを行い、環境を整えていくことが重要です。そうすることで、さまざまな浪人のつらさから自分を守ることができます。
②自分の「楽しい」を知っておく
毎日受験勉強ばかりになる浪人生活はつらいことが多いかもしれません。そこで大切なのは、しっかりと息抜きをすることです。息抜きも浪人生活を成功させるための重要なピースだと考え、戦略的に息抜きしてほしいと思っています。
第一に「自分は何を楽しいと感じるのか」をよく考えておくことです。人と話すのが楽しいという人は、2週間に一度ぐらい友人と食事をする日をつくるといいかもしれません。体を動かすと気分が晴れるという人は、ジムなどを1日1時間などと時間を決めて利用するのもいいでしょう。ゲームが好きであれば、家で時間を決めてやるのもいいでしょう。
ストレス解消法にはそれぞれの個性が表れます。自分で自分のストレス解消法をしっかり把握しておき、それを生活の中に取り入れてください。
ただし、絶対に時間を決めて行うことが大切です。例えば1時間のはずだったゲームをついつい3時間ぐらい、夜中までやってしまったときのことを想像してみてましょう。ルールを破った自己嫌悪、翌朝の眠気……ストレス解消のはずが、余計にストレスを自分にかけてしまう結果にもなり得るのです。
③つながる人、つながらない人を決める
これは前述の「他者との比較」「周りからのプレッシャー」などのつらさと関連する部分です。孤独を感じやすい浪人生活において、友人など他者とのつながりを保つことはメンタル面でメリットがあると言えます。しかし、だからといって浪人していない人の楽しそうな姿を見せつけられたり、自分の勉強時間を過度に削るような人付き合いをしたりすることは、浪人生活のつらさを助長するだけです。
自分のことを本当に応援してくれる人、自分の浪人生としての本分をきちんと尊重してくれる人たちとのつながりを大切にするのがよいでしょう。
④勉強の効果を感じられる工夫をする
前述の通り、浪人生は基本的に現役生よりも伸びしろが小さく、自分自身の成長を感じられる機会は多くありません。そこで大事なのは、自分で自分の成長を感じられる機会を創出することです。
例えば私の塾では、浪人生に毎回細かい小テストをたくさん課しています。さらに同じ範囲のテストをしばらくたってから、反復するかたちで実施してもらっています。なぜかといえば、小テストの事前準備は大変ですが、それをクリアしたときに自身の成長を感じられるからです。さらに失点した部分は課題として認識でき、次のアクションも明確になります。点数という目に見えるかたちで自分の勉強の精度を日々チェックすることで、自己成長を感じることができます。
自分の実力をチェックする機会は年に数回の模試だけだと思っている浪人生もいるのですが、そんなことはありません。小テストは一例ですが、日常的に自分で自分をチェックする仕組みを取り入れることで、自己成長と成長余地をそれぞれ感じながら前に進むことができるのではないでしょうか。
⑤日常の目標設定で工夫をする
上記に関連して、目標設定を工夫することで浪人生活におけるモチベーションを高めることができます。「〇〇大学合格!」という全体を通しての大きな目標を掲げることは立派ですが、その目標だけで毎日朝から晩まで頑張れる人は多くありません。
やはり1日単位での目標など、目の前の小さなゴールに向けて行動することで、モチベーションをなんとか保つことができるものです。1日の勉強時間や参考書の進めるページ数など、なるべく具体的な数値で日々目標設定をしてみてください。
また「最低目標」という考え方も大切です。例えば「1日18時間勉強する」という意気込みは立派ですが、目標設定が高すぎて挫折する可能性もあります。目標をクリアできなかった日は気分もよくありません。そうならないために「1日最低10時間、最高18時間勉強する」という目標に変更してみてください。最低目標をクリアしたところで、いったん自分を褒めてあげましょう。そしてそこからさらに頑張れたときは、もっと自分を褒めるのです。
そうやって自分で自分のモチベーションを高めながら過ごすことで、長期的に頑張る姿勢が身についていきます。
「浪人がつらい」に関するよくある質問
ここからは、浪人生からよくされる質問を紹介していきます。
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Q.浪人生が減っていると聞きますが、合格しづらくなっているのでしょうか?
浪人生が減っている事実は確かにあります。大学の定員増加や、年内入試などの受験方式の拡大で現役合格がしやすくなっている側面があり、浪人を回避する人が増えていることが主な理由として挙げられます。そこまで学歴にこだわらず、大学に入ってからやりたいことを極めていきたいと考える人も増えている印象です。
しかし、人数が減っているからといって、決して浪人生が合格しづらいということはありません。一般入試では現役・浪人の区別は一切なく、チャンスは平等にあります。むしろ長期間勉強を継続してこられた浪人生にとっては、一般入試はライバルよりもよい点数を取れる方策にもなり得ます。
一部の総合型選抜入試などは現役生のみが対象となっていることがありますが、それは入学定員全体の中でごく一部です。一般入試に十分合格のチャンスがありますので、不安に感じることなく努力を続けてください。
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Q.長時間の勉強がつらいのですが、浪人生は1日何時間勉強すべきですか?
毎日勉強ばかりの浪人生活が苦しくなることはよくわかります。前述のように息抜きなどをうまく取り入れて、自分の日々の生活をマネジメントしていきましょう。
何時間勉強すべきかとよく聞かれるのですが、実は塾講師にとっても回答が難しい質問です。人それぞれに状況は違いますし、やはり勉強は量だけでなく質も大切ですから、長時間やればいいというわけではありません。
その前提であえて目安を回答すれば、春は8時間、夏以降は10時間以上を目指したいところです。大事なポイントを列挙します。
・午前中の9時~12時の3時間は絶対に勉強する。
・午後の13時~18時の5時間勉強すれば、これで合計8時間。
・春は生活リズム、勉強リズムをしっかり習慣化させることを一番の目的として、無理はしない。8時間できたら自分を褒める。
・夏以降は9時〜12時、13時〜18時にプラスして、夜に数時間勉強する習慣をつけていく。また、イメージとして「日によってまちまちだけど、1週間に70時間」やるよりも「毎日安定して8時間」やるほうが好適です。例えば月曜は15時間頑張り、火曜は3時間だけ……という勉強の仕方は、一見メリハリがありそうにも思えますが、疲れやすく継続ができないのです。心身ともにすごくエネルギーを使わなければいけない日と、そうではない日のアップダウンが激しいと息切れを起こしてしまいます。
やはり毎日淡々と同じルーティンを繰り返すほうが、無駄なエネルギーを使うことなく安定感をもって継続可能になります。
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Q.浪人して、後輩と同じ学年で大学に入学することが気になります。浪人生はバカにされたりするのでしょうか?
頻繁に質問される内容です。しかし一切心配する必要はありません。信じられなければ、ぜひ周りの大学に通っている人に聞いてみてください。
大学に入ってみるとわかりますが、浪人経験者は学内にたくさんいます。自分が浪人であることを友人に明かしたとしても、「浪人なんだ、へぇー」ぐらいの反応しか返ってきません。バカにしてくる人などほとんどいないはずです。また、そもそも自分が浪人か現役かを語る場もありませんので、隠しておきたければ隠しておくこともできます。
確かに偶然にも高校の後輩と同じクラスなどになれば、一瞬気まずさはあるかもしれません。同級生なのに後輩から敬語を使われるなど……。ただそれも入学直後のほんのひとときです。意外にも後輩と仲よしの友人になるなどという例をたくさん知っています。
ちなみに社会に出ると、大学時代以上に年齢や浪人歴など誰も気にしていません。安心して入学してください。
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Q.浪人は就職活動の際に不利になりますか?
こちらはまた別の記事で詳しく紹介できればと思いますが、不利になることはまずありません。むしろ浪人の経験が有利にすらなり得ますので安心してください。
まとめ|浪人がつらいと感じる原因と対処法
浪人生活には確かにさまざまなつらさが潜んでいます。それらとうまく付き合う方法や、克服する方法を自分の中で持っておかないと、受験本番までたどり着けなくなってしまう事態にもなりかねません。
しかし、それほど大変な生活を乗り越えて成功をつかみ取ったとき、非常に大きな自信につながるのも浪人経験の素晴らしい一面です。
浪人を検討している人、すでに浪人生活を始めている人は、まずはさまざまなリスク・つらさについて知ってください。そしてそれらの中でも自分の性格や周囲の環境と照らし合わせて、特に注意したいことを把握しておきましょう。注意すべきことがわかれば、あとはそれに関する対処法をきちんと実行するだけです。
浪人がつらいと言っている人の中には、「なんとなくつらい」「なんとなく嫌だ」という状態のままの人が多い気がします。そのつらさの中身や原因を丁寧に観察・把握すれば、自ずと対処法を見いだし、克服することができるはずです。