レベル分けと4つの「受験型」から受験校を決める

 私立大学の受験校の決定は、早ければ早いほど対策する上で有利になります。遅くとも12月中旬までには確定させておく必要があります。冬休み前に、出願に必要な調査書を用意しておかなければならないからです。受験校を検討する際に考慮するべき点は多くあります。以下の項目を確認しながら受験校を決定していくとよいでしょう。

  • 受験回数
  • 受験校のレベル分けと受験型
  • 学部・学科重視か大学レベル重視か
  • 配点、倍率、問題傾向
  • 別方式の併願
  • 大学情報(キャンパスの場所、学費など)
  • 受験費用(受験料、入学金、入学金締切日など)
  • 受験順(入学金の支払いに注意)
  • 共通テストの点数次第で一般入試の出願数を変動させるか
  • 中期・後期日程/共通テスト利用の後期日程はいつまでに決める必要があるか
  • 受験場所、移動日、宿泊日、宿泊先(遠方からの受験の場合)

 このような点を考えるなかで、インターネットを検索しても明確な情報がなく、簡単に決定できないものが「受験回数」と「受験校のレベル分けと受験型」です。受験を成功させるためには行きたい大学ばかりを選ぶのではなく、滑り止めや実力に合った大学を複数選ぶ必要があります。そのためには子どもの実力に合わせて受験検討校をレベル分けし、どのレベルの大学を何回受験したら合格できそうか検討していくことが必要になります。

学力に合わせた受験校のレベル分けの方法

 まず、受験校のレベル分けの方法を説明します。受験校の決定を難しくすることの一つが、受験校のレベルと子どもの学力との比較です。多くの受験生が模試の偏差値と大学の偏差値を照らし合わせながら志望校を見極めていくことになりますが、模試だけでは判断が難しいものですし、模試で一度も判定を出していない大学を検討することも多々あります。

 さらに、模試は「〇〇大模試」という大学に特化した模試でない限り、共通テストの問題に似せたマーク模試と、国公立二次試験を標準化した記述模試になります。そのため、独自の入試を実施しているような私立大学や、国公立二次試験の問題の傾向と一致しないことがあります。

合格予測の分類表
合格予測の分類表

 そこで、私は模試以外の判断材料も取り入れた分類表を作成し、受験校を難易度が低い順に、「合格確実校(滑り止め)」「実力相応校」「挑戦校」「希望校」というように、生徒に合わせてレベル分けしています。

 まずは受験を検討している大学の模試での判定や偏差値、過去問の得点等を整理していきます。表にある「合格最低点達成率」とは、合格最低点以上の得点を取れた確率を表し、「過去問得点率」は合格最低点よりも何パーセントくらい多く点数を獲得できたのかを表しています。より正確に合格できる確率を知るために、模試の判定だけに頼らず、過去問を解いた結果も細かく見ていくことが重要になります。

 実際に生徒指導をしていると、適切な合格確実校を自ら選定できる受験生は少数です。自分のレベルを一段高く見てしまう傾向にあるため、このような基準を設けて受験校を分類し、子どもにも冷静に検討させる必要があります。

 ただし、過去問の結果を判断材料にする際に注意が必要なこともあります。たとえば、過去問には問題ごとの正確な配点が記載されていないことが多くあります。また、過去問や大学で発表されている合格最低点は、科目間の得点調整後の点数であることが多いため、合格最低点を取っていても不合格になることもあります。

 いずれにしても、実際の問題での得点率は大いに参考になるため、表のような基準で受験校のレベル分けをすることをおすすめしています。

4つの「受験型」から考える受験回数

 次に検討してもらいたいのが、受験型と受験回数です。私は生徒の性格や受験への気持ちから受験型を大きく4パターンに分類しています。

①標準型:合格確実校と実力相応校を確実に合格し、少しでも上位を狙う

②挑戦型:浪人する可能性もあるが、実力相応校を確実に合格し、挑戦校を狙う

③堅実型:絶対に浪人しないように、合格確実校と実力相応校を確実に合格する

④突進型:浪人してでも、受験校は妥協せず、挑戦校と希望校を狙う

 下の表では、一般入試を10回、共通テスト利用を5回受験するとした場合の受験型別おすすめの受験回数のイメージを表しています。どの受験型でも子どもの気持ちを尊重しつつ、最低でも1校は合格するという割り振りにしています。

レベル別 受験回数の例
レベル別 受験回数の例

※一般を10回(同日も含め)、共通テストを5回受験することを想定した場合。
※共通テスト利用で1つ合格を確保する。前出願で取れなかったら後出願で追加。

 どの受験型でも共通しているのは、なるべく合格確実校の対策に時間をかけずに合格したいということです。その一つの手段として、共通テスト利用は非常に有効です。国公立志願者だけでなく、私立志願者も共通テスト利用で1つ合格を確保することを考えておくと、受験を安心して進めることができるでしょう。

 受験料も安く、受験に行く労力も、合格確実校の独自問題の対策をする労力も必要ないという利点があります。また、共通テスト利用は共通テスト後に判定を見ることができるので、私立の一般選抜よりも合否が読みやすいという利点もあります。

共通テスト利用は科目と配点をなるべく散らす

 先ほど少し触れましたが、共通テスト利用は一般入試に比べて受験料が安く、一度の受験で複数の大学に出願が可能なため、私立受験においてもコスパのよい重要な受験方式になります。

 この共通テスト利用の戦略次第で逆転合格することも不可能ではありません。共通テスト利用は事前の準備で成否が大きく左右されます。国公立志願者も私立志願者も、文系も理系もよく理解していただきたいと思います。

 たとえば文系で、共通テストの模試・予想問題集・過去問などが表のような得点だったとします。その際に、どの大学に出願するべきでしょうか。

共通テストの実際の得点 

均等配点

共通テストの実際の得点 均等配点

共通テストの実際の得点 均等配点

中央大学 商学部 経営学科 

英語・国語重視 R:L=4:1

中央大学 商学部 経営学科 英語・国語重視 R:L=4:1

中央大学 商学部 経営学科 英語・国語重視 R:L=4:1 ※2024年度入試

法政大学 法学部 国際政治学科

英語重視 R:L=4:1 現代文受験

法政大学 法学部 国際政治学科 英語重視 R:L=4:1 現代文受験

法政大学 法学部 国際政治学科 英語重視 R:L=4:1 現代文受験 ※2024年度入試

関西大学 総合情報学部 総合情報学科

共通テスト併用 R:L=3:1 現代文受験

関西大学 総合情報学部 総合情報学科 共通テスト併用 R:L=3:1 現代文受験

関西大学 総合情報学部 総合情報学科 共通テスト併用 R:L=3:1 現代文受験 ※2024年度入試

  今回はこの3科目を選択した場合を例に解説していますが、数学、公民、理科など、他科目も選択できます。

 このように同じ点数でも、どこに出願するかで得点率が大きく異なります。ほかにも2科目しか使わない、国語が現代文+古文だけ、現代文+古文または現代文+漢文など、さまざまな配点や併用入試があります。

 また、共通テストを成功させる鍵として押さえておきたいのが、緩急をつけて点数を取るということです。受験科目のどれかに特化して得意科目を作っておくと、共通テスト利用は成功します。この共通テスト利用の戦略だけで、今まで自分のやってきた努力を最大限に発揮することができます。

 受験校の選定で手を抜く受験生が多いのですが、それは非常にもったいないことです。共通テストの後期(第2日程)の利用も視野に入れて、子どもに合った受験校を探すとよいでしょう。

共通テスト利用のポイント

・文系私立専願なら現代文のみで固める戦略もあり。国語の試験で古文・漢文を捨てて、現代文のみ解く。現代文にほかの人の2倍の時間を使う。

科目を減らしたときにはボーダーや倍率が上がることがあるので、情報を確認する。

共通テスト利用だけでなく、併用や後期も調べる。

・併用入試は英語を削れることもある。

・出願締め切りに注意。

得意科目を作っておく。

 なお、共通テストの約3日後には、大手予備校のホームページから各大学のボーダーを確認できたり、当日の点数を入力することで判定が出るようになったりします。

まとめ|情報を丁寧に入手し、適切に受験校を決定しよう

 大学入試では、どの大学を選ぶのか、そしてどの教科・科目に力を入れるべきなのか、どのような入試制度を使うのかなど、合格の可能性を高める戦略上の観点から、慎重に判断・決定すべきことが多くあります。

 また、判断・決定を行うための情報を集める作業も必要です。受験に関するこうした情報収集は、願書を提出する直前まで行うことになります。もちろん、そのような試験直前の時期には、子どもは受験勉強の「追い込み」に必死になっているでしょうから、子どもが自分でできない場合には保護者が代わりに適切な情報を集めた上で、状況に応じてわかりやすく整理して示してあげるとよいでしょう。