高校生が個別指導塾を選ぶ際のポイント

 高校生が個別指導塾を選ぶ場合、授業形式、通塾の目的、塾の特徴、講師、立地をチェックしてみてください。

授業形式|先生と生徒の人数比や、自立学習型かなど

 授業形式には、1:1の個別指導、映像授業の受講、自立学習型、それらを組み合わせた授業など、さまざまなパターンがあります。先生にすぐに質問できる環境で、じっくり指導してもらいたい場合は1:1や1:2の個別指導を選びましょう。集団塾は時間が合わないけれど、実績のある講師の講義が受けたいなら映像授業がおすすめです。コーチングを受けることで、勉強の仕方を身につけたい生徒や、ある程度自分で学習を進められる生徒は自立学習型の塾を選ぶとよいでしょう。

目的|学校の補習中心か、大学受験対策中心か

 通塾の目的に応じて塾を選ぶことも大切です。特に、学校推薦型選抜での大学受験を目指す場合は、学校の教科書に合わせた授業をしてくれたり、定期テスト対策をしっかり行ってくれたりする塾を選ぶことが重要です。評定平均を上げるためには、複数の教科でよい結果を出すことが大切ですので、幅広い教科のサポートをしてくれる塾だと安心です。

 一般選抜を受ける場合は、大学入試に直結した指導を受けられる塾を探しましょう。特に共通テスト対策・2次試験対策など、受験に必要なレベルの問題や、出題傾向に合わせた講座が受けられる塾を選ぶようにしましょう。

特徴|実績のある大手塾か、新興の塾か

「東大合格者〇〇名」などの実績のある大手塾だと、それだけの実績を出せるノウハウが整っていますし、受験情報も豊富に持っているため安心して通うことができます。一方で新興の塾は、AI教材や最新の動画コンテンツが整っていたり、校舎がきれいだったりするなどのメリットがあります。また、新興の塾でも、大手学習塾と連携した映像授業や指導を行っていることもあります。

 授業や指導の質、立地、授業料、講師との相性、志望校への合格実績などを総合的に判断して、子どもがやる気を持って通うことができる塾を選ぶことが大切です。

講師|プロ講師か、大学生アルバイトか

 個別指導塾の講師には、経験豊富な社会人のプロ講師から大学生アルバイトまで、さまざまな講師がいます。

 とはいえ一般的な傾向として、集団塾に比べて個別指導塾は、大学生や大学院生が講師を担当することが多くなっています。また、別途指名料が必要だったり、授業料が高くなったりすることもありますが、プロ講師を指名できる制度がある個別指導塾もあります。

 大学生講師のほうが生徒との年齢も近く、親しみやすいというメリットがあります。また、生徒の志望校に通っている講師がいる可能性があるのも、大学生講師のメリットです。身近な先輩から「どのように受験勉強をしていたか」「大学の雰囲気はどうなのか」などの話を聞くことで、大学生講師がロールモデルになり、モチベーションも上がることでしょう。一方で、受験情報や学校事情に精通しているプロ講師のほうが、テスト対策や受験対策を安心して任せられるでしょう。

 個別指導塾では、「大学生講師が授業を担当して、カリキュラムの設定や面談は社員が担当する」という分業制になっているところも多くあります。講師の経験や生徒との相性などを勘案して、講師を選ぶようにしてください。

立地|自宅や学校から近いか、通いやすい場所か

 通塾に時間がかかるのはもったいないため、生活サイクルに合わせて塾を選ぶ方法もあります。例えば学校の近くに塾があれば、下校時にそのまま塾に行き、勉強できるメリットがあります。また自宅から近ければ、土日の授業や季節講習の時に便利ですし、遅い時間まで自習室を利用しやすいでしょう。

 しかしながら、自宅や学校周辺に通いたい塾がないことも想定されます。そのような場合には、最寄り駅の沿線にある通いやすい塾を選ぶ方法もあります。塾は駅の近くに校舎を構えていることが多いので、通いやすい場所にある塾を探してみるとよいでしょう。

高校生が個別指導塾に通うメリット・デメリット

 塾を選ぶ時に、集団塾にするか個別指導塾にするかは悩みどころです。どちらの塾にも長所と短所がありますので、以下のポイントを参考にしてください。

個別指導塾のメリット

 個別指導塾のメリットは、生徒一人ひとりに応じた授業や指導が受けられることです。

各生徒に応じたカリキュラムとペースで学習をできる

 個別指導塾には「復習型」「予習型」などの違いはありますが、「生徒一人ひとりに応じたオーダーメイドのカリキュラム」「生徒の学力に応じた授業」を受けられることは共通しています。オーダーメイドのカリキュラムを立ててもらうことで、志望校合格のために過不足なく学習することができます。現役高校生は全員が大学受験の初心者ですので、個別のオーダーメイドカリキュラムを立ててもらえることは大きなメリットです。

 特に「逆転合格を狙いたい」という生徒には、個別指導塾がおすすめです。みんなと同じ授業を受ける集団授業では、逆転合格を狙うのは難しいでしょう。一方で、個人の特性に応じた指導を受けられる個別指導塾なら、苦手を克服して得意を伸ばすなど、学力を大きく向上できる可能性があります。

講師との距離が近く、きめ細かな対応を受けられる

 個別指導塾は、講師に質問がしやすく、学習管理やモチベーション管理などの指導も丁寧に受けられるメリットがあります。授業では、わからないことがあればすぐに質問できます。また、集団授業とは異なり、先生と双方向のコミュニケーションを取りながら授業を進めることで、より深く学習内容を理解できます。

 さらに、確認テストなどを通して個々の学習状況を把握し、それを授業に反映してもらえるので、「わかったつもり」を防いだり、苦手の克服をしたりするのに効果的です。塾によっては、毎日の学習スケジュールまで管理してくれるところもあるので、「ついサボってしまう」という生徒にとってはありがたいでしょう。

個別指導塾のデメリット

 個別指導塾には多くのメリットがある反面、次のようなデメリットもあります。

志望大学別のコースがない場合がある

 志望校に応じた対策を講じることが、無駄なく学習を進めるためには大切です。特に最難関国公立大学や医学部を目指す生徒は、志望校別の対策が欠かせません。しかし個別指導塾によっては、志望大学別のコースがないこともあります。なかでも補習塾は学校の補習が中心になってしまい、受験対策が遅れてしまう可能性もあります。

 また、総合型選抜や学校推薦型選抜などの入試方式に対応していないこともありますので、志望大学別のコースや、利用予定の入試方式に対応したコースがある塾を選ぶとよいでしょう。

ライバルがいないため、競争意識を持ちづらい

 個別指導塾ではライバル意識が芽生えにくいというデメリットがあります。競争意識を持った方が勉強に集中できる生徒の場合、集団塾の方が向いているかもしれません。

個別指導塾が向いている高校生のタイプ

 では、どのようなタイプの高校生が個別指導塾に向いているのでしょうか。

自分のペースで学習を進めていきたい生徒

 個別指導塾は競争意識を持ちづらいというデメリットがある反面、自分のペースで学習できるというメリットもあります。「周りが気になって集中できない」「わからないことをすぐに解決しながら地道に学習したい」「苦手な科目は前の学年に戻って勉強したい」タイプの生徒は、個別指導塾のほうが向いていると言えます。

克服したい苦手教科がある生徒

 克服したい苦手科目がある生徒には、個別指導塾が向いています。個別指導塾の多くは、学力診断や確認テストなどを活用して弱点を分析し、克服するための指導をしてくれます。

 また、著しく得意な科目がある生徒にも、個別指導塾が向いています。苦手科目の学習に割く時間を増やすことで、弱点の克服を目指せます。

 得意科目や苦手科目がはっきりしている生徒には、個別指導塾が向いていると言えます。

部活動や習い事で忙しい生徒

 部活動や習い事の時間と重なってしまい、集団塾の授業に通えないという生徒にも個別指導塾は適しています。個別指導塾では、週あたりのコマ数や教科、授業時間を調整できるので、忙しい生徒にとっては利便性があります。

個別指導塾の高校生の料金・費用相場

 個別指導塾は、集団塾に比べて授業料が高い傾向にあります。また、塾の授業時間や指導内容にもよるため、相場の算出は難しくなっています。そのため、以下に示す費用相場はあくまでも参考としてください。

通常コースの料金・費用相場

 通常コースは、高校何年生なのか、1コマあたりの時間で授業料が発生するのか、映像授業の料金がかかるのかなど、さまざまな要因によって料金・費用のかかり方が異なります。そのため、下記の料金・費用相場は参考程度にとどめてください。

個別指導1:1の料金・費用

 1:1の授業料の相場は、週1回1教科の受講で、25,000円から30,000円(月額)です。この他、設備費、教材費、映像授業などの料金をトータルで見ると、30,000円から35,000円程度(月額)の費用を目安に考えておくとよいでしょう。

個別指導1:2〜の料金・費用

 1:2〜の料金・費用相場は、週1回1教科の受講で20,000円から25,000円です。この他、設備費、教材費、映像授業などの料金をトータルで見ると、25,000円から30,000円程度(月額)の費用を目安に考えておくとよいでしょう。

自立学習型の料金・費用

 自立学習型にかかる料金・費用は、映像授業を受講するのか、参考書による学習だけなのか、教材費等がかかるのか、季節講習に別途料金がかかるのかなどの条件によってさまざまです。そのため、料金・費用相場を一概に算出するのは難しいですが、50,000円程度(月額)を見積もっておくとよいでしょう。

季節講習の料金・費用相場

 季節講習の料金は、受講する回数や映像授業の有無などによってさまざまですし、自立学習型の塾では季節講習を設けていないところもあるので注意しましょう。

個別指導1:1の料金・費用

 1:1の個別指導では、受講したコマ数に応じて料金がかかります。1回5,000円程度の授業料を目安にすると、20コマの受講で100,000円程度かかることになります。

個別指導1:2〜の料金・費用

 1:2〜の個別指導でも、受講したコマ数に応じて料金がかかります。1回4,000円程度の授業料を目安とすると、20コマの受講で80,000円程度かかることになります。

自立学習型の料金・費用

 自立学習型の個別指導塾では、季節講習を設けていないこともあります。季節講習がある場合は、映像授業を受講することが多く、1講座30,000円程度を見積もっておくとよいでしょう。

高校生向けの個別指導塾の選び方

 高校生向けの塾を選ぶ際には、以下のポイントに注意して選ぶようにしてください。

資料請求で料金の詳細や授業の特徴を理解する

 ここまで解説してきた通り、個別指導塾はオーダーメイドのカリキュラムを売りにしており、料金を公開していないところが多くなっています。そのため、まずは資料請求をして料金の詳細や授業の特徴を理解することが大切です。

 ただし、資料請求をしても、送付された資料に料金の概算しか書かれていないこともあり、詳細は校舎に問い合わせたり、説明を聞きに行ったりしないといけないこともあります。

無料体験授業を受け、教室や講師の雰囲気を知る

 個別指導塾では、体験授業や講習のキャンペーンを開催していることが多く、無料または安価で参加することができます。体験授業を受けることで、教室や講師の雰囲気を知ることができますし、料金やコースの詳細などの説明を受けることができます。

 教室や講師の雰囲気は、生徒のモチベーションにも直結するので、必ず確認しておきましょう。また、複数の塾の無料体験を受けることで、それぞれの塾の長所について理解しやすくなるので、少なくとも3つの塾の無料体験を受けてみることをおすすめします。

面談で、講師の変更や授業の振替等の制度について確認する

 無料体験の際に行われる面談で、講師の変更ができるのか、授業の振替制度があるのかなども確認しておくことが大切です。講師の変更については、経験豊富なプロ講師を指名する場合には別途費用がかかることもありますので注意してください。

 その他にも、カリキュラムをどの程度立ててもらえるのか、家庭学習についてもアドバイスしてもらえるのか、オプションの講座にはどのようなものがあるのか、入退室管理などのシステムは導入されているのか、自習室は無料で使えるのかなど、気になることをいろいろと質問しておくと、安心して子どもを通わせることができるでしょう。

高校生向けの個別指導塾に関するQ&A

 高校生向けの個別指導塾に関する気になるポイントをまとめています。塾選びの際には、こちらのポイントも参考にしてください。

個別指導塾は何年生から通うのがベストか?

 塾に通い始めるタイミングに、早すぎるということはありません。可能であるなら、すぐにでも通い始めるのが望ましいでしょう。特に学校推薦型選抜を利用したい場合は、高校での成績(評定)が非常に重要になってきますので、早めに塾に通うのがおすすめです。

 自学自習がしっかりとできて、学校での成績もきちんと取れている生徒でも、高2の3学期頃までには通塾を検討してください。特に難関大学を目指す場合には、過去問対策や2次試験対策に多くの時間を割くことになります。学校のカリキュラムを早めに終わらせて過去問対策ができるように、ゆとりを持って入塾しましょう。

 なお、一部の塾では「8月以降の入塾はできません」などと、入塾できる時期を指定していることがありますので注意してください。

個別指導塾だけでも、志望校に合格することができる?

 個別指導塾だけでも、志望校に合格することは可能です。ただし、どの大学を受験するのかによって、個別指導塾にするか、集団塾にするか、個別指導塾と集団塾を併用するのかを熟慮する必要があります。特に最難関校(旧帝大や早慶大)を受験する場合は要注意です。

 例えば私立大学を受験する場合、一般的には3教科で受験をすることになります。国語と英語は得意だけど、数学だけ苦手という生徒の場合は、個別指導塾で数学の対策をするのが適しているかもしれません。個別指導塾のメリットは、生徒一人ひとりに最適な指導を行えることですので、無駄なく学習を進めることが期待できます。実際に、早慶などの私立大学に特化したコースがある塾もあります。

 一方で、旧帝大や一橋大、東工大などの国立大学を受験する場合は5教科7科目(2025年度入試から6教科8科目)の対策をしなくてはならず、2次試験対策も必須であるため、すべてを個別指導塾で賄うのは現実的ではないでしょう。特に、受講できる科目が限定されていたり、国公立大学受験のノウハウがあまりない塾だと、志望校合格が難しくなることが想定されます。志望校合格のためのノウハウがある塾を選んだり、自分の学習状況などを判断したりして塾を選ぶことが大切です。

 ただし、個別指導塾に通ったとしても、集団塾に通ったとしても、授業を受けただけで満足していては、学力を伸ばすことはできません。いずれにしても、自学自習をしっかりとできることが大切ですので、自宅や自習室での学習に不安があるなら、コーチングやアドバイスを受けるようにしましょう。

個別指導塾にかかる年間費用の目安は?

 年間にかかる費用は、生徒の入試方式や受験科目、それに伴う授業の受講数や季節講習の有無など、さまざまな要因が関係するので一概に算出するのは困難です。志望校によっても費用は異なり、特に医学部受験の場合は費用が高くなる傾向があります。例えば、2教科受講なら年間100万円、5教科受講なら200万円など、多額の費用がかかることを覚悟しておきましょう。

 一方で、入会金無料のキャンペーンを開催していることもありますし、複数受講で割引が適用されるケースもあります。できるだけ費用を抑えられるように、キャンペーンなどをうまく活用するようにしてください。

高校生向けの個別指導塾に関するまとめ

 入試の多様化や映像授業の広がりにより、高校生向けの個別指導塾にはさまざまなタイプがあります。どの塾が最適かは、入試方式、講師との相性、コーチングの有無、映像授業の質などによって生徒それぞれで異なります。そのため、まずは無料の体験授業や学力診断テストを受けたり、面談をしたりして、しっかりと塾を見極めることが大切です。

 本記事で気になる個別指導塾があれば、資料請求をした上で体験授業に参加してみてください。