小学校6年生の時にシンジくんが作った席替えアプリ「席替え!楽!楽!」の キャプチャ 出所:ライフイズテック資料
拡大画像表示

小6生のシンジくんはなぜアプリを作ったのか

 21世紀生まれの子どもたちが、どれほどITに関するポテンシャルが高いのか。そのロールモデルとして、ライフイズテックの卒業生であるシンジくんこと、長滝谷(ながたきだに)晋司さんの例をご紹介します。彼がライフイズテックにやってきたのは2013年、まだ小6生の時でした。

 学級委員になったシンジくんにとって、クラスが席替えのたびに準備が大変なことと結果についてもめることは悩みの種でした。時間をかけて紙で作ったくじ引きでは、「自分が好きな席に当たるように細工している」とクラスメイトからあらぬ疑いを掛けられてしまったといいます。

 そこで彼はくじの公平性を担保すべく、クラスの人数を入力すると席をランダムに割り振るアプリを開発したのです。しかも、ホームルームを行う教室だけでなく、3人掛け3列の教室、円形テーブルの教室、6人掛けの図工室など、座席レイアウトが異なる教室にも対応する汎用性を持たせました。この「席替え!楽!楽!」はネット上で話題となり、「とても便利!」「本当に小学生の作品なの!?」といった高い評価が多数寄せられました。

 中3の時には、世界中に2000万人以上いるという自閉症の子どもが親と意思疎通を図るための絵カードを考案、iPadでも使えるアプリ「TECH SPEAK」をリリースします。どのくらいのニーズがあるのかも踏まえて、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)主催の「起業家甲子園」にエントリーしました。その後もシンジくんは、開発したアプリをいろいろなコンテストの場で積極的に披露していきます。

 中学卒業後はN高に進み、新たに精神障がい者の就職のためのマッチングアプリ「Tech Job」を開発します。企業からの求人に加えて、求職者が自分のできることをアピールして双方の結びつきを目指す点に工夫が見られました。このアプリは、「起業家甲子園 北海道大会2017」で最優秀賞を受賞しています。

 その後、シンジくんはプログラミングを使って早く仕事がしたいと大学には進学せず、大阪のIT企業に就職しました。彼はアプリを開発するとき、プログラミングやデザインのこと、さらにはどのようにユーザーを増やすかまで考えています。「自分のやりたいことで稼げるなら、大学に行く必要性を感じなかった」と彼は言いますが、それは自分で未来の進路を決定し、夢を実現できる力がすでに高校生時点であったことの表れでもあります。